字幕付きCMの取り組みが始まったのは2010年のことです。試験放送を経て普及が進められてきましたが、日本民間放送連盟(民放連)によると、在京キー局5局での放送割合は増加傾向にあるものの、2021年6月現在で推計1.02%にとどまっています。
2014年には聴覚障がい者の情報アクセシビリティ向上のため、民放連と広告業界でつくる「字幕付きCM普及推進協議会」が設立され、字幕付きCMの普及啓発活動として、動画やセミナーなどにより広告主への啓発活動を進めています。
並行して、字幕付きCMを放送できる設備を全国の放送局に整えてきました。対応する放送局は2020年から段階的に拡大しており、現在は関東・関西・東海の15局で放送されています。そして今年10月からは、全国のネットワーク系列の地上民放99局とBS民放5局にも広がる見込みです。
社会課題の解決と競争力の両立のために
聴覚障がい者へ等しく情報を伝える意味でも、CMに字幕を付けることが期待されています。また高齢化により、今後増加する、未来の聴覚障がい者にとっても、字幕付きCMは必要です。社会に広くその意義を啓発していく必要があります。 今後、字幕付きCMの普及促進のため、関係者が情報共有を深め、課題を解決していけば、字幕付きCMの制作や放送は、通常の業務、ビジネスとして運用できるようになるでしょう。
何より、人口の3割がCMの商品・サービスの情報(CMの音声情報)を受け取れていない可能性があるという事実は企業、広告主にとって大きな意味を持ちます。字幕を付けることによって、CMの情報を受け取ることができる人のボリュームが増えるというマーケティング的な効果があるからです。字幕付きCMは、CSRやダイバーシティなどの社会的貢献になるだけではありません。社会課題を解決しながら、企業の競争力を向上させるCSV創出にもつながるのです。(CSVについては、前回の記事を参照ください。)
▼今こそ企業はインクルーシブ教育でCSV創出を!
https://www.alterna.co.jp/39846/