2021年10月4日に誕生した岸田政権が、新自由主義に終止符を打つ「新しい資本主義」を掲げた。1980年代の英サッチャー政権から、米レーガン政権、日本でも中曽根政権以降に大きく影響を与えた「新自由主義」の見直しが世界規模で始まった。オルタナでも今年、「新自由主義」についての記事を複数掲載したので、まとめてお伝えする。(オルタナS編集長・池田 真隆)

「新自由主義」は、シカゴ大学(当時)のミルトン・フリードマン教授やフリードリッヒ・ハイエク教授(ともにノーベル経済学者)らが提唱した考え方だ。

「自己責任」を基本に「小さな政府」を推進し、グローバル経済化、国営企業の民営化、規制緩和と競争促進(企業向け減税を含む)、均衡財政(プライマリーバランス)などを目指す考え方だ。

日本でも「中曽根行革(行政改革)」を進めた中曽根政権だけでなく、郵政民営化を決めた小泉政権、直近の菅政権まで、その手法は新自由主義の色合いが濃かった。

中曽根行革以降、国鉄(現JR)や専売公社(現・日本たばこ産業)、日本電信電話(現・NTT)、日本郵政公社(現・日本郵政グループ)などが民営化されたのもこの一環だ。

ところが近年になって、法人・富裕層への減税、所得格差の放置によって、先進国・途上国間の格差だけでなく、先進国内でも所得格差が顕在化し、新自由主義見直しの機運が高まった。新型コロナ禍が格差を拡大した面も大きい。

今年4月には米バイデン大統領が「トリクルダウンは無かった」と明言した。トリクルダウンとは、新自由主義的な考えの下、富める者がさらに富めば、水が滴り落ちるように「自然と」貧困層にも分配が増えるという考え方だ。

米国政府は、新型コロナ対策を含めた2兆ドル規模の予算を組み、「大きな政府」的な政策を打ち出した。欧州の社会民主的な政策は、すでに新自由主義から離脱しているとみなされており、いま多くの国で新自由主義的な政策が見直されつつある。

法人や富裕層に対する減税のマイナス効果や租税回避についても国際的な議論が進む。OECD(経済協力開発機構)は10月8日、多国籍企業に対する法人税の最低税率を15%とし、タックスヘイブンによる租税回避に網を掛ける方針を打ち出した。オルタナが掲載した新自由主義についての記事は下記の通り。

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菅政権が「最後の新自由主義政権」になる 
山内康一・衆議院議員(立憲民主党)
「不平等な税をまっとうにしなければなりません。GAFAのような巨大IT企業に対する税制対策が必要です。ケイマン諸島などタックスヘイブンを使った税金逃れも問題です。日本も税と社会保障の仕組みを改善し、再分配の機能を強化していくべきです」

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貯蓄余剰と需要不足は政府が解決すべき 
武者 陵司・株式会社武者リサーチ代表
「実は、米国は、トランプの時から『大きな政府』に変わりました。トランプ政権も減税はしましたが、財政支出を増やしたので大きな政府と言えます。オバマ政権でも、リーマンショックで一時的に『大きな政府』になりました」

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新自由主義が抱える本質的な矛盾
藻谷浩介・日本総研主席研究員/オルタナ客員論説委員
「新自由主義の教義には、アダム・スミスがそもそも指摘していた通り、根源的な矛盾があります。同感力や自制なき自由競争は必然的に寡占や独占を生んで、自壊してしまうのです」