リコージャパンには「SDGsキーパーソン」と呼ばれる社員が約400人いる。毎月オンラインで最新の社会課題を話し合い、各部署に伝える指南役だ。同社の社員数は約1万9千人だが、SDGsの認知度は99.6%(2019年1月)を誇る。SDGsを通して社会課題を伝えることで、新規の営業開拓にもつながっているという。(オルタナS編集長=池田 真隆)

リコーの100%出資でできたリコージャパンは47都道府県に351拠点を持つ。デジタルサービスを提供する同社の強みは、「地域密着」だ。各都道府県に複数の拠点を持っており、地域の企業、自治体、団体、教育機関などとパートナーシップを組み、SDGsの達成に貢献している。
社内でSDGsの推進を担うのは、「SDGsキーパーソン」だ。2018年に自社のSDGsの取り組みを活性化する目的で作った制度であり、その数は413人に上る。制度を作った当初は3カ月に1回、全国からオフラインで集まり1泊2日をかけて研修を開いていたが、オンラインでの働き方が主流になった今ではオンライン会議に変わり、頻度は毎月に増えた。
最新のサステナビリティの潮流をキャッチアップしたり、各支社での取り組みを共有したりする。一般的にサステナビリティなど数値化できない領域の重要性は、売上目標を追う営業担当者には理解されない傾向にある。サステナビリティ担当者は社内浸透するにあたって、孤独になりがちだ。
そのため、オンライン会議はキーパーソンたちのモチベーションを上げることにも一役買っている。そこで話し合った内容を各部署に持ち帰り、各自の活動につなげている。同社の調査では、何らかの取り組みを行ったキーパーソンは73%に及ぶ。
社内でも着実に浸透してきた。2019年1月に実施した社内アンケートでは99.6%が「SDGsを知っている」と回答した。
同社は、「カスタマーズ カスタマー サクセス」という経営戦略を掲げている。顧客のその先の顧客まで届く価値を創出することを目指す考えだ。この考えを根本に置き、単に複写機を販売している会社から、自社のサービスで地域の課題を解決する会社を目指す。

リコージャパンのSDGs推進グループに所属する太田康子氏は、社内を変えるためには、「一人ひとりの個の力を信じることが大切。個人の意識変革をあきらめずに地道に繰り返していけば必ず変えられると思います」と強調する。