SBTiが「ネット・ゼロ」に対応した企業基準

気候変動に関する国際イニシアチブSBTi(科学と整合した目標設定)は10月28日、温室効果ガスの排出量実質ゼロを目指すための「ネット・ゼロ企業基準」を発表した。企業には「2050年までに18年比90%以上の削減」を求めた。カーボン実質ゼロを達成するために科学的見地から作られた、企業向けの基準としては世界初だ。(オルタナ総研フェロー=室井 孝之)

SBTiは科学に基づく脱炭素への対応を求める

SBTiは、国際NGOのWWF(世界自然保護基金)、CDP(旧カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)、世界資源研究所(WRI)、国連グローバル・コンパクトが共同でつくったイニシアチブだ。世界の平均気温の上昇を産業革命前と比べて1.5度以内に抑えることを目指す企業が加盟している。

SBTiに加盟している企業は、1.5度目標を実現するため、科学的見地から削減目標を策定している。今回SBTiが発表した企業向けの基準は、1.5度目標と温室効果ガスの排出量実質ゼロを達成するためには、企業は50年までに90%以上の脱炭素化が不可欠という内容だ。

SBTiのアルベルト・カリージョ・ピネダ共同設立者兼マネージング・ディレクターは、次のように述べた。

「私たちは現在、ネット・ゼロの目標や野心を持つすべての企業に、その脱炭素化の道筋が科学的に整合していることをステークホルダーに示すよう呼びかけている」

SBTiのパイロット・スキームの一環として、ネット・ゼロ・ターゲットの認証を受ける最初の7社も同日に発表した。

その7社は、アストラゼネカ(英国)、CVSヘルス(米国)、電通インターナショナル(英国)、ホルシム(スイス)、JLL(米国)、Ørsted(デンマーク)、ウィプロ(インド)――だ。

現在、より多くの企業がネットゼロ目標の設定にコミットしており、SBTiは2022年1月からその検証を開始する予定だ。

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室井 孝之 (オルタナ総研フェロー)

42年勤務したアミノ酸・食品メーカーでは、CSR・人事・労務・総務・監査・物流・広報・法人運営などに従事。CSRでは、組織浸透、DJSIなどのESG投資指標や東北復興応援を担当した。2014年、日本食品業界初のダウ・ジョーンズ・ワールド・インデックス選定時にはプロジェクト・リーダーを務めた。2017年12月から現職。オルタナ総研では、サステナビリティ全般のコンサルティングを担当。オルタナ・オンラインへの提稿にも努めている。執筆記事一覧

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