英グラスゴーで開催中のCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)で11月4日(現地時間)、46ヵ国が石炭火力発電の廃止、新規建設停止に署名した。46ヵ国には議長国の英国や欧州連合(EU)のほか、廃止を初表明した23ヵ国も含み、石炭火力の使用が多いポーランド、インドネシア、韓国、ベトナム、ウクライナなども名を連ねた。(オルタナ編集部・長濱慎)

COP26の会場では若者たちが気候変動対策を訴える抗議活動を続けている(写真:UNFCCC)
COP26の会場では若者たちが気候変動対策を訴える抗議活動を続けている(写真:UNFCCC)

日本の石炭火力大手は「火力のゼロエミ化でカーボンニュートラルへ」

一方で、温室効果ガス排出上位3ヵ国の中国、インド、米国、そして世界1位の石炭輸出国であるオーストラリアは署名しなかった。日本も石炭火力のゼロエミッション化やアンモニアの活用という、独自の選択をした。

英国が発表した声明では、先進国は2030年代、全世界では40年代のできるだけ早い時期に石炭火力の廃止を目指すとした。

日本は2日に岸田文雄首相が「化石火力のゼロエミッション化に1億ドルを投じる」と発表した通り、廃止とは異なる選択をした。

国内石炭火力大手のJ-POWERはオルタナ編集部の取材に対して、次のようにコメントした。

「再生可能エネルギー導入拡大のためにも、脱炭素化した火力発電を推進していくことは重要と考えている。COP26においては、化石火力のゼロエミッション化といったトランジションの取り組みを排除することなく、将来のカーボンニュートラルの実現に向けた前向きで現実的な議論、取り組みが行われることを期待する」(広報室)

同社は「2050年に向けた発電事業のカーボンニュートラルと水素社会の実現」を目標に、その柱として再エネ、原子力とともに、ゼロエミッション火力を位置付ける。具体的には、以下のようなロードマップを示している。

・老朽化した石炭火力の順次フェードアウト。

・石炭から生成したガスを、水素とCO2に変換するガス化技術を用いたアップサイクル(既存設備の高効率化)を進める。

・バイオマス・アンモニア混焼を導入し、CCUS(CO2回収・有効利用・貯留)と組み合わせてカーボンニュートラルを実現する。

同じく石炭火力大手のJERAは、次のように回答した。

「カーボンニュートラル・脱炭素社会の実現は、世界共通の課題・目的でありながらも、国や地域の事情によってエネルギー環境が異なるうえでは、それぞれ最適な手法・ロードマップのもとで進めていくことが肝要だと考えている。 日本政府には、資源小国である事情や、エネルギーの安定供給を含めた3Eの観点のもと、独自の取り組みを海外に向けて力強く発信するとともに、国内においては引き続き、2030年・50年における日本の姿について堅実かつ明示的な議論を進めることを期待している」(広報室)

同社は「2050年時点で国内外の事業から排出されるCO2実質ゼロ」という目標を掲げている。石炭からアンモニアへの転換をはじめとしたゼロエミッション火力の実現を目指し、以下のような取り組みを進めるという。

・ 2030年までに非効率な石炭火力を全台停廃止。

・高効率な石炭火力については、既設プラントの改造やリプレースに伴うアンモニア専焼プラントの開発を通じて、将来的にゼロエミッション火力を拡大していく。

・碧南火力発電所(愛知県・石炭火力)4号機において、24年度に燃料アンモニアを20%で発電する実証を目指す。現在は5号機で小規模のアンモニアを利用した試験を実施中。

水素やアンモニアは化石燃料から製造する過程や、輸入する過程でCO2が発生する。また、アンモニアは燃焼時に温室効果がCO2の300倍というN2O(一酸化二窒素)を排出する。カーボンリサイクル技術の実用化も含め、火力のゼロエミ化にはこれらの課題をクリアするイノベーションが必要不可欠だ。

石炭火力発電の廃止、新規建設停止に署名した46ヵ国(COP26発表より) 

アルバニア、アゼルバイジャン、ベルギー、ボツワナ、ブルネイ、カナダ、チリ、コートジボワール、クロアチア、キプロス、デンマーク、エクアドル、エジプト、EU、フィンランド、フランス、ドイツ、ハンガリー、インドネシア、アイルランド、イスラエル、イタリア、カザフスタン、リヒテンシュタイン、モルディブ、モーリタニア、モーリシャス、モロッコ、ネパール、オランダ、ニュージーランド、北マケドニア、フィリピン、ポーランド、ポルトガル、セネガル、シンガポール、スロバキア、ソマリア、韓国、スペイン、スリランカ、ウクライナ、英国、ベトナム、ザンビア