企業がCSRに取り組む真の意味とは

ニック木村の「今さら聞けないサステナビリティ」(6)

「SDGs」「ESG」「CSR」。サステナビリティを取り巻く状況は日々変化し、新たな用語も増えた。そもそもサステナビリティ領域は、どこから理解すれば良いのだろうか。カシオ計算機で約12年間サステナビリティの管理職を務めた「ニック木村」こと木村則昭・オルタナ総研フェローが「今さら聞けないサステナビリティ」の疑問にお答えする。

SDGsは中小企業には関係ない、は本当かーーニック木村の「今さら聞けないサステナビリビリティ」(5)はこちらから

【Q6】企業にとってCSRは「サバイバル目的」で取り組むこと、ということなのでしょうか。何か打算的な感じがしますが。

CSRが企業価値を向上させる

【A6】突き詰めればそういうことになりますが、CSRの目的の第一義はズバリ、「企業価値を向上させること」です。

10年ほど前までは「CSRなんていくらやったところで1円の利益も生まない!」というような言葉をよく耳にしました。筆者も当時は「確かにそうかもしれないな」と思ったものでしたが、今は全くそう思いません。CSR は「大いなる価値」を生むことを知ったからです。

企業の価値には市場的価値と社会的価値がありますが、CSR は主に社会的価値の向上に貢献します。※ 

いやむしろ、CSR の実践以上に企業の社会的価値向上に貢献するものはない、とさえ言えます。しかも、社会的価値というのはpricelessです。企業の社会的信用、信頼性や好感度、尊敬の念などというものは金額で計れるものではありません。「大いなる価値」とはそのことです。

※市場的価値への貢献ももちろんあります。社会的価値の向上によって投資家や消費者からの評価が上がれば株価や売上・利益の向上にも貢献しうるのです。

企業としてしっかりとCSR に取り組み、社会的価値を向上させれば、サバイバルの可能性は高まります。その際に大事なことは、「CSR への取り組み」を明確に社外(ステークホルダー)に発信する、ということです。 

発信の方法(メディア)は色々あります。

・ホームページ
・CSR 報告書/統合報告書
・コーポレート・レポート/アニュアル・レポート
・有価証券報告書/コーポレートガバナンス報告書(上場企業など)
・事業報告書
・株主総会招集通知(株式会社)
・ニュース・リリース
・ニュースレター
・ステークホルダー・エンゲージメント、事業状況説明会
・企業格付けアンケートへの回答、などなど

有料会員限定コンテンツ

こちらのコンテンツをご覧いただくには

有料会員登録が必要です。

kimuranoriaki

木村 則昭(オルタナ総研フェロー)

1982年上智大学外国語学部英語学科卒業後、2021年5月まで39年間カシオ計算機株式会社に勤務。初めの約27年間はシステム商品の海外営業を担当。その間オーストラリアに約2年、米国に約4年の駐在を経験。その後の約12年間はCSR推進室(後にサステナビリティ推進室)室長としてコンプライアンス及びCSR(サステナビリティ)のグループ内への浸透を推進。グローバルコンパクトの原則に基づき、ISO26000をガイダンスとして、特に「人権」を重点課題として取り組みを進めた。また、2015年にCSRリーダー組織を立ち上げボトムアップによるCSRのグループ内浸透を図った。 2018年度よりオルタナが主催するサステナビリティ(SUS)部員塾の講座「CSR検定3級試験過去問演習と解説」の講師を担当。特定非営利活動法人環境経営学会理事。

執筆記事一覧
キーワード: #CSR#ESG経営#SDGs

お気に入り登録するにはログインが必要です

ログインすると「マイページ」機能がご利用できます。気になった記事を「お気に入り」登録できます。
Loading..