LGBTQの課題解決に必要な資金を試算してみる

これを全国47都道府県でやるなら、初期費用が約3億、運営費用が年に約9億円という計算になる。しかし、LGBTのうつや自死に関する社会的損失が数千億であることと並べると、それを少し軽減できるだけでも、大きな意味があるはずだ。

LGBTQは日本では基本法もなく、政府の予算枠はない。自殺対策として厚生労働省が概算要求している金額は811億円ある。しかし、地方自治体に聞いてみると、LGBTQに関する予算は、現状ほぼない。啓発イベントやパンフレット作成で100万円もあれば良い方だ。圧倒的に足りない。

世界に目を向けると、LGBTQ支援に関する政府や助成団体の資金の流れを調査している機関がある。

直近のレポートでは、日本は$201,249(2千万円)と報告されている。アジア圏では最近まで同性愛が犯罪だったインドでも$3,859,553(4億円)。北米は2桁違って、カナダとアメリカだけで$299,743,424(340億円)、西欧で$23,632,176 (26億円)、この欧米の資金は国内だけでなく、いわゆる途上国支援にも向けられている。

日本政府も、国際的な助成団体も、日本のLGBTQに関する活動に、あまりにもお金を出していない。

このレポートは政府や団体の報告ベースなので、流石にもっと多いはず。そこで、次は全国のLGBTQ支援団体の決算報告を確認してみた。

NPOは内閣府がポータルサイトを作成しており、そこで決算情報のある主要団体の、2021年12月時点の直近の決算情報をチェックした。5大都市圏に絞って、活動実績のあるNPOの売上(経常収益)を見てみる(ざっと確認しただけなので、漏れもあると思う。是非学生や研究者の方に確認をお願いしたい)。

主要なLGBT支援団体の経常収益(都市圏別)

東京圏9団体324,118,35581.9%
札幌圏2団体2,123,2900.5%
大阪圏4団体42,155,46810.7%
名古屋圏2団体9,206,9172.3%
福岡圏2団体17,955,6394.5%
合計395,559,669100.0%

LGBTQ支援に関する日本の資金は(公開情報だけだと)全国でも4億円程度しかなく、その80%以上が東京に集中している。関東圏の人口は日本の28%、国内総生産の40%であるので、これはなかなか衝撃的だ。この年は東京のパレードがなく、コロナ禍で売上の少なくなった団体も多い。また、東京には株式会社や社団法人として活動していて、決算を公表していない組織もあり、実際にはもっと集中の度合いは高いかもしれない。

内訳を見ると、行政による資金は少なく、民間助成金、企業協賛金、個人寄付で、各団体が頑張っている。人件費を計上していない団体もあったので、個人の持ち出しで活動していると思われる。本当に頭が下がる。しかし、それでは、その個人が倒れたら、団体としての活動が立ち行かなくなる恐れがある。

muraki

村木 真紀 (認定NPO法人虹色ダイバーシティ代表理事)

認定NPO法人虹色ダイバーシティ代表(理事長)。社会保険労務士。茨城県生まれ、京都大学総合人間学部卒業。日系メーカー、外資系コンサルティング会社等を経て現職。当事者としての実感とコンサルタントとしての経験を活かして、LGBTに関する調査研究や社会教育を行う。著書「虹色チェンジメーカー」(小学館新書)執筆記事一覧

執筆記事一覧
キーワード: #LGBT

お気に入り登録するにはログインが必要です

ログインすると「マイページ」機能がご利用できます。気になった記事を「お気に入り」登録できます。
Loading..