LGBTQの課題解決に必要な資金を試算してみる

では、仮に各地域でセンターを運営するとして、資金的に可能だろうか。先にセンター運営の年間費用が約2千万円と試算した。東京はセンターの運営ができている(もちろん、各団体、他にもさまざまな事業を抱えており、これでも本当に大変なのを私は知っている)。

大阪はいくつかの団体で力を合わせればギリギリできるかもしれないが、先の試算に団体の運営費用は入れていないので、このままでは赤字になる。福岡、名古屋、札幌は、この状況ではセンターを設立、維持できない。21世紀の日本で、5大都市圏でもセンターが作れない。こんなことでいいのだろうか。

LGBTQは人口の3%から8%という調査結果がある。自殺予防の厚労省の予算が811億円だったので、その1%でも8億円あるはずだが、LGBTQ支援団体にはまったく届いていないようだ。

お金の話ばかりで下品だと思われるかもしれない。しかし、LGBTQの命と心身の健康を守るために、安心して集まることができる場所、相談できる場所が、今後、少なくとも各県に一つくらいはあるべきだ、と私は訴えたい。

LGBTQに関する日本の資金は、行政のお金も、民間助成金も、企業の資金も、個人寄付も、まだまだ足りない。行政は全国のLGBTQ支援にしっかりと予算をつけて欲しいし、基礎調査もしてほしい。企業は東京に資金を出すなら同じだけ、もしくはそれ以上に、地方にも資金を出さないと、格差の拡大につながることを意識してほしい。民間の助成団体は、子ども支援、医療支援、環境保護だけでなく、社会的少数者の支援もテーマとして注目してほしい。現状、申込できる助成金があまりに少ない。

個人の方には、是非、LGBTQ支援団体の会計情報にも着目して、事業の推進、団体の維持には一定の資金が必要なことを理解して、継続的に支援していただきたい。スタッフが幸せに暮らせないと、活動が続かない。

最後に、地方でLGBTQのためのセンターを設立、運営するモデルケースとして、私たちのチャレンジ、Pride Center Osaka へのご支援をお願いして本稿を締めたい。どうぞ皆さま、よい年末年始をお過ごしください。

LGBTQに関する常設のセンター【Pride Center Osaka】始動!

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muraki

村木 真紀 (認定NPO法人虹色ダイバーシティ代表理事)

認定NPO法人虹色ダイバーシティ代表(理事長)。社会保険労務士。茨城県生まれ、京都大学総合人間学部卒業。日系メーカー、外資系コンサルティング会社等を経て現職。当事者としての実感とコンサルタントとしての経験を活かして、LGBTに関する調査研究や社会教育を行う。著書「虹色チェンジメーカー」(小学館新書)執筆記事一覧

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キーワード: #LGBT

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