地球環境国際賞「ブループラネット賞」を2021年に受賞したモハン・ムナシンゲ教授は、今日のSDGsへとつながる概念「サステノミクス(Sustainomics)」を創出した研究者です。持続可能な開発を具体的に進めるためのフレームワークであるサステノミクスは、経済・環境・社会という3側面に目を配り、調和させることで、開発は持続可能になるという考え方です。(旭硝子財団)

持続可能な開発を進めるための具体的な方法論

2021年ブループラネット賞受賞者 モハン・ムナシンゲ教授(スリランカ)

「持続可能な開発」を進めていくにはどうすればよいのか? スリランカ出身のモハン・ムナシンゲ教授は、30年以上前からこの課題に取り組み、画期的な考え方や戦略を創出、提唱してきた研究者です。

1992年、当時世界銀行の環境政策チーフを務めていた教授は、リオ地球サミットで「サステノミクス(Sustainomics)」の考え方を発表。世界で初めて、持続可能な開発を進めていくための具体的で実践的な道筋を示しました。

「サステノミクスとは、4つの主要原則から成り、持続可能な開発を行うための統合的な方法論です」とムナシンゲ教授は語ります。

「1つ目の原則は、個人が率先して行動すること、また行動できるよう権限を委譲するという原則です。まずは個人レベルで明らかに持続可能でない行動をなくしていき、その後会社や都市、世界へと広げていきます。2つ目は、持続可能な開発のトライアングル、つまり、経済・環境・社会という3側面の調和をとるという原則です。貧困・不平等・持続可能性など、どのテーマも常にこれらの3側面を持っています。現代は、増大していく経済が、社会と環境を壊していく構図にあり、こうした構図を変えなければいけません」

サステノミクスには、このほかに3つ目の原則 、非持続可能な倫理観を手放し、関係者間の協力を促すことや、4つ目の、議論するだけでなく行動する原則があります。教授は、自身で立ち上げたムナシンゲ開発研究所で、サステノミクスの考え方を適用した世界中の実践・成功事例を収集し、持続可能な開発戦略を立てるための実用的な分析ツールの提供や、政策の提案などを行っています。

先進国、途上国のあり方を示した「BIGG」の道筋

公正な包括的グリーン成長(BIGG)の概念図。ムナシンゲ開発研究所Policy Paper 1(2015)をもとに、旭硝子財団で日本語化 *クリックすると拡大します

サステノミクス発表後、ムナシンゲ教授と共同研究者たちは、この方法論を実際の世界で進めていくことの難しさにも気がつきました。世界の指導者や政策決定者にサステノミクスの考えを取り入れてもらうため、いっそう実用的な方法として教授が創出したのが「公正な包括的グリーン成長(BIGG)」という考え方です。

BIGGは、各国それぞれの開発段階に合わせて、異なる持続可能な開発の道筋を示しています。既に安全限界を超えている先進国は、生活の質を維持しつつも変革を進め、経済と環境の両立を目指します。途上国は、先進国の通った道ではなく、最新の技術や知見を活かして、安全限界を超えることなくグリーン成長トンネルを通って経済と環境の両立を目指します。

また教授は、2010年、サステノミクスに基づいた「ミレニアム消費目標(MCGs)」という概念も発表しています。これは、地球資源のほとんどを消費している世界の富裕層に持続可能な消費パターンへの転換を求め、何十億人もの貧しい人々を助けるためにも資源を使えるようにしようというものです。この概念はその後、SDGsの目標12(つくる責任 つかう責任)にも組み込まれました。

ムナシンゲ教授にお話をうかがった旭硝子財団の発行する「af Magazine」の全文は、こちらからご覧いただけます。

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