トヨタの問題解決、本当の原因の見つけ方とは

トヨタ財団は3月23日、トヨタ自動車の問題解決手法をNPO向けに伝える連続講座「第6期(2021年度)トヨタNPOカレッジ『カイケツ』」第3回を実施した。同講座は、社 会課題解決の担い手である非営利組織のマネジメントを改善し、より大きな成果を出してもらうことが目的だ。第3回は、グループワークで「現状把握」の状況を確認しながら、次回に向けて「要因解析」のポイントを解説した。(オルタナ副編集長=吉田広子)

トヨタ財団は、助成金を拠出するだけでなく、NPOに問題解決力を身に付けてもらうことを目的に、2016年から「トヨタNPOカレッジ『カイケツ』」を開催。NPOが抱える組織上の問題点を改善し、社会的課題の解決を後押しする。第6期は全国から9団体がオンライン参加している。

トヨタの問題解決は、「テーマ選定」「現状把握」「目標設定」「要因解析」「対策立案」「対策実行」「効果の確認」「標準化と管理の定着」の8ステップからなり、参加団体は約7カ月間かけて問題解決のプロセスをA3用紙1枚にまとめていく。

今回のテーマ「現状把握」は、問題が起きている事実を定量的に把握するステップ。事象をデータ化し、問題点をしぼり込む。主観ではなく、多くの客観的な事実を集めて定量的に整理するのがポイントだ。

トヨタ自動車で長年品質管理に携わってきた古谷健夫講師(クオリティ・クリエイション代表取締役)は、「現状把握は『しぼり込み』が重要だ。網羅的になると、机上の検討になってしまい、有効性のある対策立案につながらない。『ルールをつくる』『マニュアルをつくる』といったよくあるものになってしまう。解決のカギは現場にある。必ず現場に向き合って、問題解決の糸口を見つけてほしい」と語った。

種子島で「やりたい」を表現できる文化づくり

カイケツに参加する一般社団法人LOCAL-HOOD(鹿児島県中種子町)の代表理事・湯目由華(ゆのめゆか)さんは、種子島のまちづくりについて語り合うイベント「たねがしまスープ」を運営。米デトロイト発で、スープを食べながらアイデアを出し合う「デトロイトスープ」をモデルに、地域住民が自由に「やりたいこと」を表現できる文化づくりに取り組んでいる。

「もともとは地域おこし協力隊として、種子島に移住しました。地域の方と触れ合うなかで、『種子島ではチャレンジしにくい』という声を聞いたのです。それがきっかけとなって、住民が『やりたい』ことを発表し、それをみんなで応援していく文化をつくりたいと考え、『たねがしまスープ』を始めました。同じような課題意識を持つ地域はほかにもあるので、こうした仕組みを広げていけたら」(湯目さん)

たねがしまスープは、住民が「地域を良くするアイデア」を発表し、それを参加者が支援する仕組みだ。参加者は、スープ代と投票権を購入し、応援したいアイデアに投票する。最も得票の多い発表者が全投票分の支援金を得られる。これまで地元の高校生などもプレゼンを行ってきた。

「たねがしまスープ」で「空き家リノベーションプロジェクト」を提案した種子島中央高校の生徒
「たねがしまスープ」で「空き家リノベーションプロジェクト」を提案した種子島中央高校の生徒
yoshida

吉田 広子(オルタナ副編集長)

大学卒業後、米国オレゴン大学に1年間留学(ジャーナリズム)。日本に帰国後の2007年10月、株式会社オルタナ入社。2011年~副編集長。執筆記事一覧

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