■レオス・キャピタルワークス 八尾尚志シニア・ファンドマネージャー

気候変動と企業における情報開示のスタンダードとなった、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)。同枠組はさまざまな情報開示を奨励しているが、機関投資家はどこに着目して投資判断を行うのか。資産運用会社・レオス・キャピタルワークスのESG投資責任者である八尾尚志シニア・ファンドマネージャーは「ガバナンス」がほぼ全てだと語る(オルタナ副編集長・長濱慎)

数字よりも会社の在り方そのものが重要と語る

八尾尚志(やつお・ひさし)
1990年、和光証券(現みずほ証券)入社。三菱証券(現三菱UFJモルガンスタンレー証券)を経て2004年、オプティマル・ファンド・マネジメント入社。同社では、インベストメント・アナリストとして約7年半にわたり年間400〜500社を取材。 2013年、レオス・キャピタルワークス入社。

■TCFDは「投資家フレンドリー」

――TCFDを、どのように評価していますか。

TCFDは投資家の要請によって作られた枠組みであり、「投資家フレンドリー」なものと捉えています。重要なポイントは気候変動対策だけでなく、財務へのインパクトも含めた情報開示を求めていることです。しかも開示する情報が決まっており、複数の企業を横並びで比較できることも投資家にとってはメリットです。

英国政府やSEC(米証券取引委員会)、ISSB(国際サステナビリティ基準審議会)もTCFDに準じた開示を求めています。今後TCFDは、気候変動と財務の情報開示におけるグローバルスタンダードになるでしょう。

――TCFDはガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標という4つの領域の情報開示を求めています。機関投資家がもっとも注目するのは、どの領域でしょうか。

ガバナンスに尽きます。トップが気候変動に対して確固たるビジョンを持ち、オーナーシップを持って取り組んでいるか。どのような体制でリスクの評価や管理を行なっているか。ガバナンスがしっかりしていなければ、いくら立派なシナリオがあっても実効性を期待できません。

シナリオ通りに進まず、今回のロシアによるウクライナ侵攻のような不測の事態も起こります。その時に、気候変動対策を棚上げして化石燃料の確保に走るのか、再生可能エネルギーの拡大に舵を切るのか、どちらを選択するのかはガバナンスにかかっています。

■シナリオの数字は見るが、それほど気にしないのも事実

――ガバナンスがあってこその、リスク管理やシナリオ分析ということですね。

極論を言ってしまえば、リスクやシナリオの数字はどうにでもなります。現在はおおむね1.5℃シナリオ(産業革命以前と比較して気温上昇を1.5℃以内に抑える)が、世界的なコンセンサスになっています。ここから逸脱せずに国際機関のデータなどを利用すれば、ある程度説得力のあるシナリオを作れるものです。

もちろん投資家は数字を見ますが、それほど気にしていないのも事実です。海外で企業のミーティングに出ても、投資家から出るのは数字よりも長期的なビジョンに関する質問の方が多いほどです 。

――TCFDレポートを通して、企業のあり方そのものを見ているということですね。