キリンホールディングスは7月6日に公開した「環境報告書2022」で、水や生態系など自然資本の減少から見た時の事業リスクを国際組織TNFDの指針に沿って開示した。同指針に沿った開示は国内初だ。気候変動と生物多様性はコインの表裏の関係であり、サステナビリティ経営を追求するには気候変動と自然関連リスクを統合的に分析することが必要になる。(オルタナS編集長=池田 真隆)

「午後の紅茶」の茶葉を生産するスリランカの生産者

なぜキリンは自然関連リスクの開示に取り組むのか。それは事業を持続可能にするためだ。

同社の事業領域は、酒類・飲料、ヘルスサイエンス、医薬の3つだ。いずれも農産物と水が原料である。気候変動と自然資本の状況が事業に大きな影響を与える。

同社の「午後の紅茶」はスリランカから紅茶葉を輸入する。その量は、日本がスリランカから輸入する紅茶葉の4分の1に当たる。つまり、生産地の生態系を守らないと安定的な供給ができないリスクがあるのだ。

こうした考えから、同社では10年以上前から自然関連リスクを調査し、生態系の保存活動を行ってきた。

その一つがスリランカの紅茶農園向けの「レインフォレスト・アライアンス認証」の取得支援だ。レインフォレスト・アライアンス認証は持続可能な農法を認証するものである。

キリンではこの取組みを通じて得たネットワークを活用し、2018年から水源地保全活動も行う。地域の在来種を植林することで単一栽培の紅茶農園に多様性を与えた。集中豪雨などで山の斜面から流出した土砂が水源地に流れ込むことを防いでいる。

このほど公開した環境報告書では、自然関連リスクをTNFDが提唱する「LEAPアプローチ」に沿って開示した。LEAPアプローチとは、「場所」に焦点を当てて、自然資本への影響や対策の優先順位を付ける方法だ。

具体的には次の4つの項目を順番に分析する。「自然との接点を発見(Locate)」「依存関係と影響を診断(Evaluate)」「リスクと機会を評価(Assess)」「自然関連リスクと機会に対応する準備を行い投資家に報告(Prepare)」。

 環境報告書ではSBTNが提唱する「AR3Tフレームワーク」に沿った自然資本の開示も試行的に行った。