株式会社オルタナは7月13日に「サステナビリティ部員塾」18期上期第4回をオンラインで開催しました。当日の模様は下記の通りです。

①ビジネスと人権:サプライチェーンのリスク問題

時間: 10:30~11:45
講師: 下田屋 毅 氏(Sustainavision Ltd. 代表取締役)

英国を拠点に日本企業にCSR/サステナビリティに関する研修、関連リサーチを実施している下田屋氏が、サプライチェーンにおける人権リスクがどこにあるのか、「ビジネスと人権」の国際動向などについて解説した。

過去には、アパレルや農業・食品流通などのサプライチェーン上で起きた火災などの事故を契機に、途上国における強制労働・児童労働などが見つかるケースがあった。

これらの事例を紹介しながら、グローバリゼーションの中で、企業の営利目的と人権・環境などの社会価値との齟齬が深刻化していることや、発注元企業の意思と反し、間接的な再委託先に人権課題が見られたことを共有した。

英国などの「現代奴隷法」にも触れ、借金による束縛や、脅し、暴力などの精神的に逃げられない状況を生み出す現代奴隷は、日本でも起きていると警鐘を鳴らした。

企業の人権課題への取り組みは、国連の採択した「ビジネスと人権に関する指導原則」が中核になるが、年内には経済産業省からも「サプライチェーンにおける人権尊重のためのガイドライン」が出る見込みだ。

人権への負の影響を特定し、潜在的な影響の防止と軽減の仕組みづくりを行い、取り組みを追跡評価して情報を提供・報告する「人権デューデリジェンス」は、「海外進出や上場の有無にかかわらず、実施しなくてよいという状況ではない」と下田屋氏。

人権課題への取り組みは、経営リスクの回避だけでなく企業競争力の向上につながることを説明した。

ミニプレゼンテーション:日本の中の「難民問題」への取り組み

時間:11:45~12:00
講師:認定NPO法人 難民支援協会 吉山昌 氏

日本で暮らす難民の現状と、難民支援協会が取り組む包括的な支援(住居、就労、医療など)について紹介した。世界の難民は2021年末で8930万人、現在は1億人を超えている。しかし21年に日本が難民認定したのは74人に過ぎない。

認定されるまでの時間も長く、その間の公的支援も弱いため、生活に困窮する例も多い。そこで難民支援協会は企業や法律事務所と協働し、地域で安心して暮らせるよう支援を行なっている。

近年は難民を採用したいという企業も増えており、「海外から逃れてくる人々にウェルカムと言える日本社会にしていきたいと。吉山氏は希望を語った。

②企業事例:日本マクドナルドのサステナビリティ戦略

時間:13:00~14:15
講師: 岩井 正人 氏(コミュニケーション&CR本部 サステナビリティ&ESG部マネージャー)

日本マクドナルドはSDGsの17ある目標のうち、6つに重点的に取り組んでいる。

■2飢餓をゼロに
 リーズナブルな価格で人々に食べてもらう
■8働きがいも経済成長も
 社員とアルバイトを含む全従業員の働きがいが企業の成長につながる
■12つくる責任つかう責任
 責任ある食材の調達を行い、廃棄物は正しく処理する
■13気候変動に具体的な対策を
 サステナブル認証の食材調達やプラスチックのリサイクルを進める
■15陸の豊かさも守ろう
 肉、野菜、ポテト、バンズの原料を持続的に調達できるよう生態系を守る
■17パートナーシップで目標を達成しよう
 従業員、フランチャイジー、サプライヤー、投資家、行政、NGO、NPOと手を組み目標を達成する

フィレオフィッシュの魚はMSC、コーヒーはレインフォレストアライアンス、 パーム油はRSPO、紙容器はFSC認証に100%切り替えた。これらサステナブル・ラベルの情報は来店者がトレーマットのQRコードやアプリを通して見ることができ、持続可能な調達の大切さを社会に広める役割も担っている。

子ども向けメニュー「ハッピーセット」のプラスチック玩具をトレーにリサイクルしており、2021年は305万個を回収した。回収は店舗で行い、不要になった玩具を持参する家族にリピーターになってもらうと同時に、子どもにリサイクルを身近に感じてもらう機会にもなっている。

健康と福祉への取り組みとして、国内11カ所の「ドナルド・マクドナルド・ハウス」を運営。難病を抱える子どもが入院する医療機関の近くに1泊1000円の宿泊施設を設け、家族と触れ合える時間を提供している。岩井氏は「SDGsの掲げるユニバーサル・ヘルス・カレッジにもっと貢献したい」と語る。

岩井氏は「食品を扱う企業として安全安心は当たり前。『おいしさと笑顔を地域のみなさまに』というパーパスの通り、生産者やサプライヤーと協力して『モノでなく笑顔を運ぶ』サプライチェーンを目指したい」と、強調した。

➂企業事例:ネスレ日本のサステナビリティ戦略

時間:14:30~15:45
講師: 嘉納 未來 氏(ネスレ日本株式会社 執行役員コーポレートアフェアーズ統括部長)

ネスレは世界186カ国で2000以上のブランドを展開する。約27万6000人の従業員がおり、79カ国に354の工場を持つ。CSV(共有価値の創造)をつくったネスレの歴史は社会課題の解決から始まった。

創業者のアンリ・ネスレは1867年、53歳の時にスイス・ヴェヴェーで乳児用乳製品を発売した。当時は乳幼児の死亡率が高かったこともあり、成功を収めた。1875年、アンリ・ネスレは事業を同じ地域の3人の企業家に売却すると国際的に拡大していく。その後、1905年、ページ兄弟がスイスのカムで1866年に設立したアングロ・スイス煉乳会社と合併した。こうして現在のネスレが生まれた。

ネスレは食の力で現在、将来世代の生活の質を高めるというパーパスを掲げる。このパーパスのもと、経営戦略として8つの柱を持つ。「健康とウェルネスの専門知識を活かす」「手頃な価格で、安全かつ高品質な栄養を提供」「安全かつ健康に配慮したパッケージ」「長期的なサステナビリティ目標にコミット」などだ。

環境に配慮したパッケージや食品ロスの削減、地域コミュニティ支援活動なども展開するが、今目指すのは、「リジェネレーション」という概念だ。サステナビリティを超えた概念であり、保護・再生・復元を指す。嘉納氏は「再生可能なフードシステムの推進」と説明した。

すべてのブランドにサステナビリティの概念を加えて展開するが、訴求する際のポイントは4つあると指摘した。

その4つとは、「トップマネジメントのコミットメント」「社員一人ひとりのオーナーシップ」「コミュニケーション:誠実さと透明性」「パートナーシップと協働」。

特にコミュニケーションについて、嘉納氏は「掲げたことができても、できなくてもプロセスを含めて誠実に出すことが重要」とした。パートナーシップについては、「社会課題は1社では解決ができない。問題発見、監査、解決など各段階でパートナーが必要」と訴えた。

➃WS(自社のアウトサイドイン&パーパス表現①)

時間: 16:00~17:15
講師:森 摂(株式会社オルタナ代表取締役 オルタナ編集長)

サステナビリティ経営戦略には、アウトサイドインの発想と次の3つが必要だと説明。その後、参加企業のうち10社(オムロン、三洋化成、ウイングアーク1st、エバラ食品工業、デンカ、ライオン、イカリ消毒、ワイ・ヨット、イカリ消毒、住友理工)がプレゼンテーションを行った。

①「何のために取り組むのか」を明確化(パーパス)
②「自社らしいCSRとは」を明確化(ミッション)
③(野心的な)非財務の長期目標(ビジョン)