■記事のポイント
①郷原弁護士「企業の不祥事は『カビ型』と『ムシ型』の2要素がある」
②データ改ざんや談合などの多くは「カビ型不祥事」
③カビ型の根絶には、法令と実態の乖離是正と契約との実態との適合仕様変更が重要だ
日本企業の不祥事が絶えない。郷原信郎弁護士によると、「ムシ型」不祥事は一部の悪意がある経営幹部や社員によるもの。データ改ざんや談合などは、社内全体に蔓延する「カビ型」に分類できる。カビ型は感染症と似ていて、内部通報制度や社外取締役すら機能不全に陥ることもある。(オルタナ編集部・萩原哲郎)
――「コンプライアンスは、法令順守だけでなく社会的要請に対応していくことだ」と強調していますね。社会的要請を意識されたきっかけは。
一番大きなきっかけとなったのは公共事業における談合問題です。建設業界では、2006年ごろまでほとんどの公共工事で談合によって発注者が決まっていた歴史があります。違法行為がシステムとして公共調達全体に蔓延していました。
当時の公共調達制度は発注の実態と乖離していたのです。そういう状況で「法令順守」と掛け声を掛けても問題解決になりません。
そこから出てきたのが「ムシ型」と「カビ型」のアナロジーです。
カビ型不祥事は、組織の利益のために手を染め、その手法は引き継がれていきます。時間的、人的に広がりをもち、感染症と似ています。好む・好まざるにかかわらず、関与せざるを得なくなるのです。談合はその典型例です。
ムシ型不祥事は個人が自らの利益のために行うものです。害虫に殺虫剤を撒くのと同じように不祥事を起こした個人の責任を厳しく追及すれば解決します。
一方で「カビ型不祥事」への対処は複雑です。
ムシ型不祥事への対処と同じ発想で調査すると、実態を把握するのに時間を要します。カビ型で重要なのは背景にある構図なのです。
■やめられずに広がる改ざん