記事のポイント
- 海外からの個人旅行が2年ぶりに解禁、価値観に訴える「観光設計」が重要
- 観光業界が参考とすべき事例に長野・千曲の「日本遺産活用」がある
- その土地に根付く歴史や文化を生かした「官民の協創」を紹介
海外からの個人旅行が2年半ぶりに解禁され、国内でも全国旅行支援が始まった(いずれも10月11日から)。新型コロナで大きな影響を受けた旅行業界、観光業界の今後の対応が注目される。コロナ禍の中での「自省」の時間を経て、今後の方向性を探る上で参考となる「協創の鼓動」を示したい。(千葉商科大学基盤教育機構・教授/ESG/SDGsコンサルタント=笹谷 秀光)
■日本文化遺産:長野県「月の都 千曲」
長野県の日本遺産に『月の都 千曲-姨捨の棚田がつくる摩訶不思議な月景色「田毎の月」―』がある。これは、日本人の美意識を表す「月見」の名所だ。歴史的に文学や絵画の題材となってきた「姨捨山に照る月」、「田毎の月」を題材にしている。
日本遺産のサイトによると、姨捨は地名の響きから、棄老物語を語り伝えてきた。それは、月見にちなむ文芸への遊び心を鼓舞する一方、棚田での耕作や伝統行事を通じて古老の知恵と地域の絆を大切にする教えを育んできたという。
この日本遺産の構成文化財は、長楽寺境内と歌碑群、歌川広重作 浮世絵「信濃更科田毎月鏡台山」、揚州周延作 錦絵「更科田毎の月」、藤原信一作 教訓画譜「姨捨山之図」、武水別神社や、姨捨の棚田、姨捨駅 駅舎などである。
加えて、登録有形文化財になっている、長野銘醸酒蔵、坂井銘醸酒蔵、千曲川のハヤのつけ場漁や蕎麦・おしぼりうどん・おやきも含まれている。
同じく登録有形文化財である、戸倉(とぐら)上山田温泉 笹屋ホテル別荘(豊年蟲)も構成文化財の一つだ。笹屋ホテルに宿泊して周辺を回ってみた。