記事のポイント
- カナダで使い捨ての割り箸を使った循環型ビジネスが注目を集める
- 2016年に木材エンジニアが立ち上げたチョップバリューだ
- 回収した使い捨て割り箸でモダンな家具や雑貨をつくる
使い捨ての割り箸を再利用し、モダンな家具や家庭用品にアップサイクルする企業が注目を集める。2016年に木材エンジニアがカナダで立ち上げたチョップバリューだ。使い終わった割り箸を回収し、モダンな家具に再生する「サーキュラーエコノミー型事業」が共感を呼んでいる。(ニューヨーク=古市 裕子)
世界大手の調査会社IMARCは、2022年の割り箸の市場規模は181億ドル(約2兆4000億円)と公表した。2023年から2028年までに5.3%の成長率で268億ドル(約3兆億円)に達すると見込む。
一方で特にコロナ禍後、世界で数百億本の割り箸が消費・破棄されていることが問題視され、過度な環境破壊の原因につながるのではないかと懸念の声も上がる。
そんな中、チョップバリューのフェリックス・ボックCEOが掲げるビジョンは明確だ。木材廃棄物の再利用を通して、社会と環境にポジティブな影響を与え、価値ある社会変革をもたらすことがビジョンだ。
カナダのバンクーバーだけでも1日に約10万膳の割り箸が廃棄されている。同社を設立した当初は、市内の飲食店に割り箸用のボックスを設置し、週に約35万膳分を回収した。
回収した割り箸は、プレス機で押し潰してタイル状に加工し、水性樹脂でコーティングし、高温で乾燥させる。さらに過熱しプレス機にかけ、再利用できる素材に作り変えた。耐久性のある木材は、テーブルやタンス、クローゼットなど生活用家具に生まれ変わる。
■年15億本を再利用へ
同社は2020年、マイクロファクトリー(小規模な工場)のフランチャイズ構想を立ち上げた。コンセプトは「世界で入手可能、現地で製造」だ。フランチャイズパートナーが効率的に製造でき、地域の資源や人材を活用することで、サプライチェーンに掛かる費用を抑えて迅速に提供する仕組みを構築した。
現在、世界65カ所にネットワーク拠点を置き、独自の技術で付加価値を生み出す。将来的にマイクロファクトリーで数日内に製品を納入できる体制にする。
2025年までに拠点を75カ所まで増やし、年間15億本の再生利用を目指す。高まるアップサイクル需要に対応するため、関心のある開発パートナーを積極的に求めている。
今後の展開をどう考えているのか。フェリックスCEOはオルタナの取材にこのように語った。
「チョップバリューは、『廃棄物』を『資源』に変え、機能的で美しい製品に仕上げ、持続可能な循環経済に積極的に取り組んでいます。世界中にマイクロファクトリーの分散型ネットワークを構築する私たちの目標は、各都市で割り箸を回収し、製品化して地元で流通させることです。これは製造業の循環型カーボン・エコノミーを生み出す機会であり、新たな規範となるべきものです」と話した。