記事のポイント
- 欧州議会は、欧州森林破壊防止規則の国別リスク分類制度の導入に異議を唱える決議を採択
- EUDRは、森林破壊リスクが高い農林産品や加工製品を対象にしている
- 一部のEU加盟国からは、規則の簡素化や延期を求める動きも出ている
欧州議会はこのほど、欧州森林破壊防止規則(EUDR)の国別リスク分類制度(ベンチマーキング)の導入に異議を唱える決議を採択した。EUDRは、パーム油やコーヒーなど、森林破壊リスクが高い農林産品や加工製品を対象にしている。同規則は2025年末から適用が予定されていたが、一部のEU加盟国からは、規則の簡素化や延期を求める動きも出ている。(オルタナ輪番編集長=吉田広子、編集協力=植松美海)
EUDRは、EU域内で販売・輸入される特定の農林産品が、森林破壊や劣化にかかわっていないことを企業が証明することを義務付ける新たな規則だ。パーム油、牛肉、木材、コーヒー、カカオ、天然ゴム、大豆などの主要な農林産品や、それらを原料とする加工製品を対象としている。
EUDRでは、各国を「低リスク」「中リスク」「高リスク」の3段階に分類し、検査や報告の義務レベルを決定する「国別リスク分類制度」を導入している。2025年5月に公表された初めてのリスク分類リストでは、ロシア、ベラルーシ、ミャンマー、北朝鮮のみが「高リスク」とされた。
同規則は2023年に施行され、2025年末から適用予定だった。
しかし、欧州議会は7月9日、国別リスク分類制度の導入に異議を唱える決議を採択した。提案したのは、中道右派グループのアレクサンダー・ベルンフーバー議員(欧州人民党: EPP)だ。同議員は、「無視できるリスク」という新たなカテゴリーを加えるようにも求めている。
この新たなカテゴリー「無視できるリスク」が加わると、規則の厳格さが薄れ、実効性が失われる可能性がある。
さらに、ブルームバーグの報道によると、オーストリア、フィンランド、ルクセンブルク、ハンガリー、スウェーデンなど18のEU加盟国は7月15日、欧州委員会に規制の延期と簡素化を求める書簡を送った。
世界自然保護基金(WWF)は、「欧州議会は気候危機を無視し、EUDRの信頼性とEUの気候リーダーシップを危機にさらしている。今こそEUDRの着実な実施が必要だ」と強く批判した。