記事のポイント
- LINEヤフーが11月10日に自社ECで「象牙類似品」の規制を強化する
- 同社は2019年11月に象牙商品取引を禁じたが、「象牙類似品」と偽っての違法取引も
- 専門家は取り組みを評価し、政府に対しては法整備などの対策求める
LINEヤフーは11月10日、自社EC「Yahoo!オークション」「Yahoo!フリマ」の細則などを改定し、「象牙類似品」に対する規制を強化した。同社は2019年11月に象牙商品の取引を禁止したが、それ以後も象牙商品を「象牙類似品」と偽った違法取引が確認されていた。今回の改定でそうした抜け穴をふさぐ。専門家は今回の取り組みに対し肯定的評価をする一方、日本政府に対しては法整備や「国内市場閉鎖」を求める声がでている。(オルタナ編集部・萩原 哲郎)

LINEヤフーは10月10日、「Yahoo!オークション」細則と「Yahoo!フリマ」掲載特約の改定を告知した。改定では新たに「象牙類似品の出品に関するルール」を新設する。
■象牙と誤認させるおそれのある表現は禁止に
「象牙類似品」とは、商品説明等で「象牙風」「象牙調」などの象牙を想起させる語句が含まれている商品や象牙に材質的に類似した素材を使用した商品などを指す。
それらの類似品に対して、「模様や断面がある場合は、それが確認できるように拡大画像を含む複数の画像を掲載」、商品に使用されている素材の「具体的な材質を明記」、「商品名には『象牙』の語句や象牙を示唆する表現の使用禁止」などを定めた。「象牙を示唆する表現」として「象牙風」や「象牙調」、「本物風」、「アイボリー風」などを例示する。
また商品説明文中で「象牙」などの語句を使用する場合も、象牙との混同を避ける目的が明確である場合は認めるが、「本象牙と見分けがつかない」など、象牙であると誤認させる恐れがある表現は禁止する。「象牙」という語句を使用しなくても、象牙であると誤認させるおそれのある表現も禁じる。
国内の大手ECサイトは象牙取引を禁じているが、今回のようなルールを定めたのは初とみられる。
LINEヤフーの担当者はオルタナの取材に対して「近年、本物の象牙を『象牙類似品』と偽って販売する手口が確認され、環境省など関係機関からも注意喚起が行われています。こうした状況を受け、違法取引の未然防止と、利用者による誤出品・誤購入の防止を目的に、ルールの明確化を行いました」とコメントした。
■「進まぬ法整備が浮き彫りに」と専門家
今回のLINEヤフーの取り組みに対して、専門家は評価する一方で、「進まぬ法整備」が浮き彫りになったという声も出ている。
WWFジャパン(公益財団法人世界自然保護基金)の野生生物グループ長で、野生生物の取引を調査・モニターするNGO・TRAFFIC(トラフィック)ジャパンを兼務する西野亮子氏は、「政府が国として象牙取引に対する法整備を進めないために、そもそも自主ルールとしてECサイトが独自に取引禁止に踏み切ったこと自体を評価する」と話す。
その上で「企業側がモニタリングや真贋の確認をするといった高コストな運用を続けている状況にあり、自主ルールの限界を浮き彫りにしている」と指摘した。
■6月には「象牙風」と偽った取引で業者を摘発
■民間事業者の自主ルールには限界も
■世界では象牙取引市場の閉鎖が進む
■種の保存法改正に向けた議論が進む

