記事のポイント
- 長時間労働に依存するほど生産性が低くなることが分かった
- 労働経済学に詳しい東京大学大学院の山口慎太郎教授が指摘した
- 「公平な働き方」が適切な人材配置につながり、利益の向上にも寄与する
国連グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパンは1月27日、都内で「公平な働き方」をテーマにしたサミットを開いた。基調講演には、労働経済学に詳しい東京大学大学院経済学研究科の山口慎太郎教授が登壇し、長時間労働に依存する企業は競争力が低くなることを指摘した。山口教授は、「公平な働き方」が適切な人材配置につながり、利益の向上にも寄与するとし、経営者には評価基準の再定義や内向き仕事をやめる決断などを求めた。(オルタナ輪番編集長=池田真隆)

「公平な働き方」という言葉を聞くと、どうしても道徳的、あるいは社会的要請として捉えられがちで、「企業の利益向上とは別次元の話ではないか」と感じる方も少なくありません。しかし、実証研究の立場から見ると、これはむしろ逆なのです。
長時間労働に依存しない、時間制約のある人でも能力を発揮できるような働き方を実現できている企業ほど、人材を適材適所に配置しやすくなります。その結果、効率性だけでなく、競争力が高まる可能性が高いのです。
長時間労働は一見すると「頑張っている」「成果につながりそうだ」と思われがちですが、データを見ると必ずしも合理的ではありません。
■週労働時間50時間超で生産性が下がる
英国の製造業を対象にした研究では、週労働時間が48時間程度までは生産性が上昇するものの、49時間前後から伸びが止まり、50時間を超えると明確に低下することが示されています。
つまり、「長く働けば働くほど成果が出る」という相関性は途中で崩れます。特に工場のように一定の集中力や判断力を求められる現場では、疲労の蓄積がミスや非効率化につながりやすく、結果的に生産性を押し下げてしまうのです。
製造業以外でも同様の傾向が確認されています。オランダのコールセンター業務のデータでは、労働時間が長くなるにつれて、処理件数の増加率が鈍化し、時間当たりの生産性はむしろ低下していきます。労働時間を倍にしても、成果は9割程度しか増えないという結果は非常に示唆的です。
中国の研究では、創造性に与える影響も分析されています。携帯電話の位置情報と特許申請データを組み合わせた分析によると、1日10時間程度までは働く時間が長いほどイノベーション(特許申請件数)が増えますが、それを超えると急速に低下します。創造的な仕事ほど、長時間労働の弊害が大きいことが分かります。
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