記事のポイント
- ポスト2030に向けて「ビヨンドSDGs」を巡る議論が国内外で始まっている
- 企業にとってビヨンドSDGsは、未来の市場や制度、価値観の前提条件となる
- 企業は「経営の探索活動」としてビヨンドSDGsへの戦略的な関与が不可欠だ
2030年以降の国際目標・枠組みを展望する「ビヨンドSDGs」を巡る議論が、国内外で着実に進み始めています。企業にとってビヨンドSDGsは、未来の市場や制度、価値観といった経営の前提条件を形作るものとなります。その形成プロセスに主体的に関与することは、未来の競争環境を読み解き、独自の戦略ポジションを築くことにつながります。企業は「経営の探索活動」として、ビヨンドSDGsに戦略的に関与することが求められています。(オルタナ編集委員/サステナビリティ経営研究家=遠藤 直見)
■SDGsの先にある社会像を描き、発信しよう
SDGsの達成目標年(2030年)が射程に入ったいま、国際社会は、次にどのような社会像を描くのか、どのような価値観や制度を基盤とするのかを問い直そうとしています。その議論は、企業の長期的な競争条件そのものに影響を与えます。
2026年2月3日付の日本経済新聞「私見卓見」に掲載された「日本はビヨンドSDGsを描け」と題する笹谷秀光・千葉商科大学客員教授の論考は、ビヨンドSDGsを巡る議論において、日本が果たすべき役割と可能性をあらためて浮き彫りにしました。
笹谷氏の論考の要点は以下のとおりです。
- ビヨンドSDGsはすでに「未来のルールメイキング」の段階に入っている。欧州の政策機関やグローバル企業は、次期枠組みを前提とした戦略再構築に着手しており、日本が傍観すれば標準形成から取り残されるリスクがある。
- 次期枠組みでは、気候・人権・包摂・地域・健康・教育を統合し、ウェルビーイングを軸とする構造的アプローチが求められる。各国・企業は、自らの特性を生かした価値を提示することが求められる。
- 経営者は、環境や人権など分散した取組を「束ねて」事業モデルに接続し、それを国際基準の言語に「翻訳」し、実例とデータをもって世界に「発信」する責任を負う。標準は、提案とエビデンスの蓄積によって形成される。
笹谷氏は、日本が積極的にSDGsの先にある新しい価値観や社会像を描き、行動のための枠組みや価値体系を構想・発信していくべきと提言しています。
本稿では、ビヨンドSDGsを企業戦略の文脈で受け止め、その形成プロセスへの戦略的な関与を「経営の探索活動」として捉える視点を提示したいと思います。
■ビヨンドSDGsは目標の更新ではない
ビヨンドSDGsとは、単なる目標の更新ではありません。またSDGsを否定したり、置き換えたりする概念でもありません。SDGsが果たしてきた役割を踏まえつつ、2030年以降の持続可能な社会のあり方を構想するための思考の枠組みです。
SDGsは、17の目標と169のターゲットを通じて、世界が共有すべき社会課題を可視化し、政府・企業・市民社会を横断する共通言語として成果を上げてきました。
一方で、目標達成そのものが自己目的化しやすいこと、気候変動と経済成長のようなトレードオフが可視化されにくいこと、課題の背後にある制度や価値観への問いが十分に深まらなかったことなど、構造的な限界も明らかになりつつあります。
ポスト2030を見据えた議論においては、社会・経済・環境の構造転換を前提として、ウェルビーイング、包摂性、世代間の公平性といった概念を軸に、未来の社会像や制度、価値観を問い直す視点も重要になります。
■ビヨンドSDGs、2027年から議論本格化へ
2024年の国連未来サミットで採択された「Pact for the Future(未来のための協定)」は、SDGsの進捗と限界を踏まえ、2030年以降を見据えた国際協力や制度設計の必要性を明確にしました。
ビヨンドSDGsを巡る本格的な議論は、Pact for the Futureを出発点とし、2027年のSDGサミットを公式な場として展開される見通しです。
国内では、ビヨンドSDGs官民会議(理事長:慶應義塾大学・蟹江憲史教授)が中心となり、提言形成が進められています。政府、企業、研究者、市民、ユースなど多様な主体が参画し、SDGsの進捗と課題を整理しつつ、未来志向の持続可能性像を探る議論が行われています。
■模倣されない戦略ポジションを築こう
■「未来を探索し、構想し、創造する」という覚悟を
■ビヨンドSDGsへの関与は、サステナ経営の最前線に導く

