「排出量取引」4月から義務化も「キャップ」は設けず

記事のポイント


  1. 政府は2026年4月、排出量取引制度(GX-ETS)を本格稼働させる
  2. 炭素の価格付けを行い、脱炭素と産業競争力の同時実現を狙う
  3. 政府による総量規制(キャップ)は設けないため、実効性に疑問の声も

政府は2026年4月、排出量取引制度(GX-ETS)を本格稼働させる。同制度は「成長志向型カーボンプライシング構想」の中核をなすもので、脱炭素と産業競争力の同時実現を狙う。だが、政府による総量規制(キャップ)は設けないため、企業が脱炭素技術への投資判断に二の足を踏む状況は続きそうだ。(オルタナ輪番編集長=池田真隆)

2027年度以降の上下限価格は、前年度の価格に価格上昇率(3%+物価
上昇率)を乗じて決める 出典:経産省

政府は今後10年間で150兆円超の官民GX投資を見込む。その呼び水として20兆円規模のGX経済移行債を発行し、研究開発や設備投資を先行支援する。

一方で中長期的にはGX-ETSで炭素価格を段階的に引き上げる。価格シグナルを通じて民間の脱炭素投資を誘導する狙いだ。急激な負担増ではなく、予見可能性を重視し、企業の設備更新や技術開発の意思決定を後押しする。

GX-ETSの制度対象は、直近3カ年平均でCO2排出量10万トン以上の事業者。約300~400社が該当し、日本の排出量の約6割をカバーする。

経済産業省GXグループ環境経済室の大原眞晴・室長補佐は、「30年度まではこのカバー率を維持する方針」と話した。

原則として直接排出(スコープ1)のみを対象とし、電力由来の間接排出(スコープ2)は義務対象外とした。GX-ETSは欧州などが導入する「キャップ・アンド・トレード型」に切り替わるが、総量を固定する「ハードキャップ」ではない。排出原単位ベースの「ベンチマーク(BM)方式」を軸とした点が大きな特徴である。

業種ごとに排出原単位(CO₂排出量/生産量)に基づくBMを設定し、その水準に各事業者の実際の活動量(生産量など)を乗じて無償割当量を算定する仕組みを採用した。

26年からは業種内の排出効率上位50%水準をBMとし、2030年度までに上位32.5%水準へと段階的に引き下げる。各企業は自社の排出原単位を業界上位水準に近づければ近づけるほどインセンティブを持つことになる。

■不足分の調達が不履行で負担金の支払い
無償の排出枠では価格シグナル弱く
グリーン調達の抑制の恐れも

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M.Ikeda

池田 真隆 (オルタナ輪番編集長)

株式会社オルタナ取締役、オルタナ輪番編集長 1989年東京都生まれ。立教大学文学部卒業。 環境省「中小企業の環境経営のあり方検討会」委員、農林水産省「2027年国際園芸博覧会政府出展検討会」委員、「エコアクション21」オブザイヤー審査員、社会福祉HERO’S TOKYO 最終審査員、Jリーグ「シャレン!」審査委員など。

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キーワード: #排出量取引

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