
オルタナ84号(2026年3月30日発売)の全コンテンツは次の通りです。
書店では販売しておらず、WEBストア(BASE)やアマゾンでご購入可能です。
■「alternative eyes」: 「ウェルビーイングと『政治の責任』」
オルタナ84号をお届けします。第一特集は「ウェルビーイング」がテーマです。世界保健機関(WHO)の憲章(1946年)による「健康の定義」において、「病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態(well-being)にあること」(日本WHO協会訳)として広まった概念です。
■高橋さとみの切り絵ワールド―葛と藤

まわり巡った葛藤はこれから先の糧となる
■第一特集: ウェルビーイング分断の時代こそ
企業経営や政策のキーワードとして、日本でも「ウェルビーイング」が広がっている。その一方で、気候危機や、DEI(多様性・公正性・包摂性)への反発、紛争の長期化など、世界は新たな分断に直面している。いま改めて、ウェルビーイングの意義を見直し、再設計する時代に入っている。
■座談会: 組織戦略としてのウェルビーイング
ヒトの心と体の健康を意味する「ウェルビーイング」(WB)を、官民のさまざまな組織が取り込む動きが急速に広がってきた。環境省も「第6次環境基本計画」でWBを「解決すべき環境・経済・社会の諸課題」の一つに位置付けた。WBは社会や組織への効果やアプローチ手法が不明確である一方で、一部ではSDGs後継候補としても注目される。
■世界初の認定制度、そのポイントは
ウェルビーイングの第三者認定制度が2026年1月から始まった。抽象的に語られがちだったウェルビーイングを、国際標準という形で整理した国際規格だ。世界初となる認定制度の策定をリードした一般社団法人社会的健康戦略研究所(東京・港)の浅野健一郎・代表理事に、そのポイントを聞いた。
①キリン: 当事者になりきる、相互理解深める
キリングループは、育児や介護などの疑似体験を行う研修「なりキリン」を全社で展開する。急な早退など突発対応に備えることで、ウェルビーイングに欠かせないチーム内の相互理解を深めることが狙いだ。若手社員の声から生まれたこの研修は同社にとって、ふうどかいかくを進める象徴的な取り組みだ。
②埼玉りそな銀行: 「道徳銀行」が地域の幸せを追う
埼玉りそな銀行(さいたま市)は、「日本一暮らしやすい埼玉」を目指し、地域課題の解決にコミットする。「道徳経済合一」を唱えた渋沢栄一が揮毫(きごう)したものだ。地域の幸せのための取り組みは、従業員の働きがいも高めている。
③一般社団法人みどりのドクターズ: 医療の脱炭素が患者の幸福に
一般社団法人みどりのドクターズは、プラネタリーヘルスの観点からウェルビーイングを模索する。国内のGHG排出量の5%を占める医療・保健・介護分野の脱炭素が、新たな患者を生まぬ社会につながると説く。
④積水ハウス:在来種の植栽が住人を健康に
積水ハウスの「5本の樹」計画は、住民の植栽に地域の在来樹種を採用することで生物多様性を回復させる。一般的な園芸品種では難しい鳥や蝶とのふれあいは、住人のウェルビーイングに寄与する。
➄清水建設: ビル木質化で心身に癒し効果
清水建設がオフィスや住宅の開発プロジェクトで木質化を進める。木質化はストレス低下や生産性向上の効果があるとされており、林野庁も木造・木質化の評価項目のひとつとして心身面などでのメリットを挙げる。
⑥イトーキ: 働くだけでなく交流や癒しも
コロナ禍を経て働き方が多様化し、オフィスのあり方が社員の定着や生産性を左右する。イトーキは2018年から新本社オフィスで新しい働き方を実践し、オフィスづくりにも生かす。
⑦住友生命保険: 運動がポイントに
⑧アシックス: 顧客の健康も促す
⑨カップ・オブ・セラピー: 心の悩み語る場に
⑩ヘッドバーシティー: スキルで不調防ぐ
⑪日工: 子ども目線も問う
⑫富士フイルム: 笑顔の数を増やす
⑬ロート製薬: 動物の幸せを想う
⑭デコボコベース: 凸凹活かす社会に
⑮BIPROGY: 働く女性つなげる
■トップインタビュー: 三振でも良いから「打席に立とう」
堀 直樹・三菱UFJ銀行取締役会長
三菱UFJ銀行の堀直樹会長が2026年4月に退任することが決まった。CHRO(最高人事責任者)など、人事部門を長く務めた堀会長は「減点主義」から「加点主義」への転換を目指してきた。後輩たちには、「打率よりも打数を評価できる銀行に」と呼び掛ける。
■トップインタビュー: リテラシー高めデジタル格差解消
西田 修一・LINEヤフー執行役員サステナビリティ推進CBUリード
LINEヤフーは2026年2月、CSRの新方針を策定し、若年層のデジタルリテラシー支援を重点領域の1つに位置付けた。SNSや生成AIの利用が拡大し、倫理的な課題が顕在化する中、どのように解決を目指すのか。西田修一・執行役員サステナビリティ推進CBUリードに聞いた。
■トップインタビュー: 心的資本経営で人の力を引き出す
粟田 貴也・トリドールホールディングス代表取締役社長兼CEO
外食産業が人手不足、コスト高、デジタル化の波に直面する中、「丸亀製麺」などを運営するトリドールホールディングスは2025年9月「心的資本経営」を掲げた。効率化や省人化を急ぐ業界潮流とは一線を画し、「人の心」に経営の軸を置いた。粟田貴也代表取締役社長兼CEOに聞いた。
■トップインタビュー: 複雑な政策より明確なワンワード
上田 康治・環境省環境事務次官
脱炭素だけでなく、資源循環や生物多様性など環境政策に求められる課題は増えてきた。環境省の事務方トップ上田康治・事務次官は、「従来の規制的なアプローチでは限界がある」と指摘した。複雑な政策よりも分かりやすい「一言」が社会を動かすと語った。
■世界のソーシャル・ビジネス
〔米国〕都市を循環型に、1万人の雇用狙う
米ニューヨークではリサイクル率を上げるため「都市の仕組みそのものを設計し直す」動きが活発化してきた。都市政策は、「出た廃棄物をどう処理するか」という対策が中心だった。循環型に移行することで1万人以上の雇用創出や数十億ドル規模の経済効果を見込む。
〔フランス〕パリ郊外にできた初のリユース村
パリに隣接するモントルイユ市に、2025年9月、小路の両側にリユースショップ8店が並ぶリユース村「ヴネル(小路)」ができた。中古衣料や家具を販売する店はフランス中にあるが、非営利団体が運営する店が複数集まるリユース村は初めてだ。従業員に失業者を雇い、人々の「連帯」を目的としている。
〔コスタリカ〕障がい者の自立へ車いす行進で訴え
障がい者の自立した生活を訴え、中米コスタリカで280㎞を車いすで行進し、世論を動かして法制度化を実現した女性がいる。障がい者自立生活センター「モルフォ」のウェンディ・バランテス代表だ。車いすでの行進はコスタリカ社会の関心を集め、同国の「障がい者自立推進法」の成立につながり、その動きは中南米各国にも波及している。
■第二特集: GX‐ETS義務化、総量規制設けず
政府は2026年4月、排出量取引制度(GX‐ETS)を本格稼働させる。同制度は「成長志向型カーボンプライシング構想」の中核をなすもので、脱炭素と産業競争力の同時実現を狙う。だが、政府による総量規制(キャップ)は設けないため、企業が脱炭素技術への投資に二の足を踏む状況は続きそうだ。
■第三特集: 削減貢献量にもウォッシュリスク
削減貢献量は社会全体の温室効果ガス(GHG)排出量の削減に貢献した度合いを定量化する叶え方だ。だが、削減貢献量は開示の方法を誤るとグリーンウォッシュとして批判を受ける対象になりかねないリスクもある。投資家などステークホルダーから正当な評価を受けるには、どのように取り扱うべきか。
■第四特集: 環境だけじゃない、ウォッシュの蔓延
実態が伴わないにもかかわらず、環境配慮を印象付けるようとする「グリーンウォッシュ」については、各国で法整備が進む。「ウォッシュ」には「ごまかす」「欠点を覆い隠してよく見せる」という意味がある。環境に限らず、ジェンダー、スポーツ、ウェルビーイングなどの領域でもウォッシュに対しては厳しい視線が注がれている。
■第五特集: EVも再エネも主戦場は新興国に
世界のゼロエミッション車は25年、新車販売の25%を占めた。太陽光・風力など再エネ発電も、遅くとも26年には世界で初めて化石燃料を上回る見込みだ。大気汚染の軽減や化石燃料輸入の支出削減など、アジアや中南米をはじめとした新興国は、EVや再エネ拡大を戦略的に優位だと認識する。脱化石燃料の重心は今、先進国から新興国手動へと移りつつある。
■第六特集: ナイキのDEIに政府圧力
米国の雇用機会均等等委員会(EEOC)は26年2月、米ナイキが白人労働者に人種差別を行った疑いがあるとして、連邦裁判所に召喚状執行訴訟を提起したと発表した。調査に必要な情報を同社に提出させるためで、ナイキは声明で「これは驚くべきエスカレーション」と反発した。DEI(多様性・公平性・包摂性)をめぐり、米政府と企業の対立が鮮明になった形だ。
■オルタナティブの風(田坂広志) 仕事の報酬 五つの意味
読者は、仕事には「五つの報酬」があることを、ご存じだろうか。
第一は「給料や年収」、第二は「役職や地位」。この二つは、誰もが認める「目に見える報酬」であるが、これに加えて、実は、仕事には、「目に見えない報酬」が三つある。
■エゴからエコへ(田口ランディ) 接続されすぎた世界
2月28日、帰宅途中のSNSで、アメリカがイランを空爆したことを知る。ああ、人類史上もっとも接続された時代に生きているな、私。でも人間の神経系は旧石器時代のままだ。情報源は忘れたが「ニュース接触が1日2時間を超えると不安傾向が上がる」という話を聞いた記憶がある。
■サステナ規制にどう向き合うのか(小口誠司) マテリアリティで違いを示せ
ここ数年で、サステナビリティを取り巻く環境は劇的に変化した。かつての「ESGバブル」のような一種の熱狂は落ち着き、現在は実質的な成果や企業価値との結びつきがシビアに問われる「ESGリアル」の段階に移行しつつある。
■真のサステナビリティ投資とは(澤上篤人) バブル崩壊でひどいことに
日本株市場をはじめ世界の金融市場はバブル高に踊り狂っている。否、バブルという認識すらもたない投資家や市場関係者たちで、どの市場もあふれ返っている。
■モビリティの未来(清水和夫) 健康管理もクルマの価値に
筆者は自動走行の政府委員を2013年から務めており、当初はSIP(戦略的イノベーションプログラム)という内閣府主導の委員会のメンバーとして、自動走行に向けた様々な先進技術や制度設計に関する会議に参加していた。
■日本農業 常識と非常識の間(徳江倫明) 「あきたこまちR」を有機と認めるか
私が有機農業を普及しようと思い立って50年が過ぎた。その間、様々な問題にぶつかってきたが、農水省、秋田県ともども、よほど情報を閉じていたのか、「あきたこまちR」という米を知ったのはごく最近のことだ。
■「森を守れ」が森を殺す(田中淳夫) 危うさだらけの再造林ブーム
このところ林業界でブームと言えば「再造林」である。言葉どおり、伐採跡地に再び造林をして次世代の木を育てることを指す。それというのも、山の木を全部伐る皆伐が推進される中、林野庁が全国の再造林率は3-4割にすぎないと公表したからだ。つまり伐った後に植えずに放置する林業がまかり通っていることがわかってきた。
■人と魚の明日のために(井田徹治) 日本沿岸の漁業資源に危機
「アジやサバ、ブリの資源は危険水域にある」。水産庁による最新の資源評価で、日本沿岸の水産資源の多くで厳しい状況が続いていることが明らかになった。
■フェアトレードシフト(潮崎真惟子) 異常気象時代の調達リスク
2025年末、東南アジアで記録的な豪雨と土砂崩れが相次いだ。タイ南部では「300年に一度」とも言われる規模の降雨が観測され、サイクロンなどによる豪雨はインドネシアやタイ、マレーシアで洪水なども引き起こし、インドネシアだけでも約330万人が被災し、死者は1千人を超えたとされる。
■社会イノベーションとお金の新しい関係(鵜尾雅隆) 国際協力の新潮流は日本にも
国際協力が、今大きな転換点に来ていると感じている。ともするとそれは、後ろ向きな文脈で捉えられているかもしれない。例えば米国ではトランプ政権下でのUSAID(米国国際開発庁)の解体があり、英国やフランスも国防費の増加の必要性などからODA(政府開発援助)を3-4割という大規模削減をしている。
■論考・サーキュラーエコノミー(細田衛士) コンビニはカトラリーの有料化を
昼食用の弁当を買うために大学のコンビニを便利に使っている。もちろんレジ袋は持参する。だが、支払いの時にぼんやしていると、知らないうちにカトラリーが持参の袋に入ってしまっている。
■欧州CSR最前線(下田屋毅) 「オムニバス法案=負担軽減」ではない
EUで、サス台ビリティ関連規制を簡素化するオムニバス法案が2026年2月末に採択された。CSDDD(企業持続可能性デューディリジェンス指令)やCSRD(企業持続可能性報告指令)を巡り、企業の準備が「遅れるのでは」という空気が強まっている。
■「こころざし」の譜(希代準郎) 近江という国
ちょっとしたことをきっかけに、脈絡がないように見えたひとつの言葉と古い記憶がカチッと結びつくことがある。
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