記事のポイント
- 「脱炭素を進めるほどGHGが減らない」という声が企業担当者から相次ぐ
- 脱炭素を成長機会に置く企業ほど、事業縮小しか削減方法がないという
- 背景にはスコープ3の算定手法が抱える構造的な矛盾がある
サプライチェーン全体で温室効果ガス(GHG)排出量を実質ゼロにすることが、企業の実務担当者には求められている。一方、自社の管理下にない「スコープ3」の削減方法はいまだ模索中だ。「削減するには、事業を縮小するしかない」という声も聞かれる。企業の実務担当者が直面する「スコープ3の壁」について、日本気候リーダーズ・パートナーシップの石田建一・顧問に寄稿してもらった。
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「脱炭素を事業拡大の機会に置いたが、削減するには事業を縮小するしかない」ーー。GHGの削減を担当する企業の実務担当者からこんな声をよく聞くようになった。スコープ3の領域は二次データで算定を行う企業が多いが、算定精度が高くないことで、脱炭素を進めるほど、GHGが増えてしまう「矛盾」が起きている。(日本気候リーダーズ・パートナーシップ顧問=石田建一)

多くの企業が「サプライチェーン全体での脱炭素」を掲げている。しかし、実際に担当者が取り組むと、理想と現実の間には大きなギャップがある。
■スコープ1,2とスコープ3の重要度は同等でいいのか
SBTなど国際的な脱炭素イニシアティブでは企業にサプライチェーン全体(スコープ1〜3)でのGHGの削減が求めている。もちろん、自社で直接使用する燃料や電力以外にも、低炭素の材料を購入し、省エネ性の高い製品を販売することが脱炭素社会の実現には必要不可欠であることは理解している。
実際、排出量を削減しようとすると、スコープ1,2は自社のコントロール下で計画的に削減目標を決めて実行できるし、やらなくてはいけない。
しかし、サプライヤーからの購入資材の低炭素化は、自社の脱炭素化とは違いコントロールができない。お願いはできるが、脱炭素目標を達成しなければ購入しないというような、強制力をもって実行することは日本では下請法などの関係で不可能である。
さらに、中小のサプライヤーにとっては、低炭素の実行や排出量算定の人材も資金の余力もない。
結果として、企業はスコープ3を自社努力だけで削減することができない構造的な制約を抱えているのだ。
■スコープ3の算定精度に構造的な矛盾も
■GHG排出量の第三者検証は必要なのか
■算定手法の「粗さ」を許容する評価制度を

