記事のポイント
- 化石燃料からの脱却に関する第1回国際会議が4月末に閉幕した
- 国連の枠組みとは別に開催したこの会議を、世界は「ゲームチェンジャー」とみなす
- 海外メディアによる報道を参考に、会議の意義をまとめた
コロンビアのサンタマルタで2026年4月24日から開催された、初めての「化石燃料からの脱却に関する国際会議」が29日、閉幕した。気候変動の主要因である化石燃料からどのように脱却を図るべきかを議論するために、世界57カ国が集まった。奇しくも世界がホルムズ海峡危機に直面するさなかの開催となったこともあり、海外メディアはこの会議を「ゲームチェンジャー」になると捉え、大きく報じたが、日本での報道は極めて限定的だ。(オルタナ輪番編集長=北村佳代子)

気候変動に関する国際会議としては、COP(国連気候変動枠組条約締約国会議)がある。しかしCOPの枠組みでは全締約国の合意を前提としているため、化石燃料からの脱却に関する具体的な議論の進展はこれまで、サウジアラビアをはじめとする産油国などからの反対で阻まれてきた。
コロンビアでの国際会議の目的は、気候変動の主な原因である化石燃料から脱却すべきかどうかを議論することではない。化石燃料からどのように脱却すべきか、企業、先住民、科学者、その他社会のあらゆる関係者から、経済や社会を化石燃料から切り離すための最善の方法について議論・協力し合うことが主眼だ。
英国のレイチェル・カイト気候変動担当特別代表は、「同じ志を持つ仲間を見つけ、彼らから学ぶこと、何がうまくいっていて、何がうまくいっていないのかを知ることが目的だ」と話した。
サンタマルタの会議には世界のGDPの3分の1を占める57カ国及びEUが参加した。共同主催国のコロンビアとオランダは、これまで化石燃料からの脱却に積極的な姿勢を示してきた国々を招待した。世界で最もCO2排出量の多いトップ3の米国、中国、インドからの参加はなく、日本政府も招待はされなかった。
日本と米国を除くG7諸国や、ベトナム、フィリピンといったAZEC(アジア・ゼロエミッション共同体)参加国が参加した。なお米国からは、経済規模で日本を抜いたカリフォルニア州が参加した。中国からも、電気自動車大手のBYDが、豪鉱業会社のフォーテスキュー社と共同で民間セクター向けラウンドテーブルのホストを務めるなど、民間企業による参加はあった。
■世界のメディアが注目する国際会議に
この会議には、世界のメディアは大きな関心を示した。会議主催国によると、61の報道機関と28カ国から、146人のジャーナリストが直接現地で取材をした。日本のメディアで現地取材を実施したのは、朝日新聞社1社だけだ。そのため、日本語でこの会議の動向を詳報したのは、国内大手メディアでは朝日新聞(主として電子版)に限られている。
一方で世界では、数えきれないほどの人がライブ中継を視聴するなど、会議の開催前から閉幕後に至るまで、多くの報道がなされた。スイスのメディア「スイス・インフォ」が、「コロンビアでのサミットは、化石燃料の段階的廃止に向けた『歴史的な』一歩となる」と見出しを打ったように、多くの海外メディアがこの会議を「歴史的」と形容して報じた。
特に英ガーディアン紙が4月24日、国際エネルギー機関(IEA)のファティ・ビロル事務局長のインタビューを掲載すると、現地は想像していた以上の盛り上がりを見せたという。
ビロル事務局長は、「イランでの戦争によって化石燃料産業は修復不可能なほどに破壊された。石油とガスの供給途絶とそれに伴う価格高騰は、各国を化石燃料からより安全な再生可能エネルギー源へと永久に転換させるだろう」と同紙に話した。IEAは、世界中のエネルギー企業や投資家の長期計画に絶大な影響力を持つと、ニューヨーク・タイムズ紙は評している。
コロンビアのイレーネ・ベレス・トーレス環境大臣は、ビロル事務局長の発言を歓迎した。
「化石燃料は希少性があり、その希少性は操作される可能性があるため、化石燃料ではエネルギー安全保障を確保できないということを、多くの人が同時に認識し始めているようだ」と、気候変動問題に取り組むジャーナリストらでつくる国際団体「カバリング・クライメート・ナウ(CCN)」のインタビューで語った。
ほかにも米ニューヨーク・タイムズ紙は、「世界各国が気候変動について話し合うために集まったが、米国は招待されなかった」との見出しで、この会議を大きく報じた。
同紙は、「ついに、ついに、ついに、気候危機の要因の86%を占める化石燃料に焦点が当てられる」という南アフリカの人権活動家でグリーンピース・インターナショナルの元事務局長のクミ・ナイドゥ氏の言葉を紹介した。
ナイドゥ氏は、今回のような準公式の国際会議が実質的な影響を与えた前例として、対人地雷禁止条約(オタワ条約)を挙げた。同条約は、当初44カ国による国際会議がきっかけとなって1997年に署名が始まり、1998年時点で133カ国が署名、47カ国が批准したものだ。有志国と市民社会が連携して人道的な条約を生み出した点で画期的な「オタワ・プロセス」として知られる。
■仏、「2030年に石炭・45年に石油・50年にガス」から脱却へ
サンタマルタでの国際会議開催期間中、フランス政府が4月28日、化石燃料への依存から段階的に脱却する「国家ロードマップ」を発表した。2030年までの脱石炭(2027年までに残る2つの石炭発電所閉鎖)、2045年までの脱石油、2050年までの脱化石ガスという計画だ。
サンタマルタでの国際会議の意義を、「『自滅行為』となる化石燃料を終わらせるための会議」と紹介した仏大手メディアのル・モンド紙は、この仏政府の発表を、「前例のない」計画と紹介した。
そして、「これほど明確かつ包括的な計画を発表した国はほかにない。各国が化石燃料への依存を見直しているこの時期に、重要なメッセージを発信した」というアナリストのコメントを報じた。
■「約束」から「行動」へ、移行の機運高まる
コロンビアのベレス環境大臣は4月29日、会議の閉幕に当たって「これは終わりではない。新たなグローバル気候民主主義の始まりだ」と発言した。「化石燃料からの脱却に関する国際会議」の第2回は2027年2月、太平洋の島しょ国・ツバルで継続開催(アイルランドとの共同開催)されることが決まった。
そしてそれまでに、化石燃料の生産・輸出に焦点を当てた各国の脱化石燃料ロードマップの設計、マクロ経済依存や金融制度の改革、化石燃料の生産者と消費者の連携を促進する「化石燃料フリー」の貿易システムの構築といった3つの作業部会を設置するという。
米ワシントン・ポスト紙は、「各国、コロンビアでの(脱)化石燃料サミットを終了」との見出しで、「法的拘束力のある約束はなかったものの、公約から行動へ移行する機運が高まっている」とまとめた。
そして、「世界的な議論は、石油、ガス、石炭を段階的に廃止すべきかどうかという段階から、いかにしてそれを実現するかという段階へと移行しており、最大の障害の一つとして資金調達が浮上している」と報じた。
英フィナンシャル・タイムズ紙は「50カ国以上が化石燃料削減のための貿易措置に取り組むことで合意」したと報じた。今回参加した国による化石燃料の消費量は、世界全体の3割を占める。
■中国・インドのメディアはどう報じたか
■「日本は脱化石燃料に足踏みしている場合ではない」

