Jリーグのプロサッカークラブ、社会連携活動でもクラブの価値を高める

記事のポイント


  1. Jリーグが各クラブの社会連携活動「シャレン!」の表彰式を開いた
  2. 各Jクラブは、地域で協働者とともに社会・地域課題の解決に取り組む
  3. 表彰式も、インクルーシブでサステナブルなイベント運営で行った

公益社団法人日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)は5月18日、全国のプロサッカークラブ(Jクラブ)が実施している社会連携活動「シャレン!」の2026年表彰式を開催した。「シャレン!」は、Jクラブが3者以上の協働者と連携して、社会や地域課題の解決に取り組む活動だ。その表彰式も、給水ボトルの設置や手話による同時通訳など、サステナビリティの視点を重視した運営を徹底した。(オルタナ輪番編集長=北村佳代子)

Jリーグの社会連携活動「シャレン!」の表彰式が行われた
(写真提供:Jリーグ)

Jリーグは5月18日、東京・丸の内の明治安田ホールで「2026 Jリーグ シャレン!アウォーズ」を開催した。

全国のJクラブは、地域に根差したスポーツクラブとして、地域の自治体、学校、企業、高齢者施設、NPO法人など、多くの協働者と連携しながら、各地域で抱える課題の解決に取り組んでいる。Jリーグでは、「シャレン!アウォーズ」として、多種多様な社会連携活動「シャレン!」の中で特に幅広く共有したい活動を毎年表彰する。

Jリーグの辻井隆行執行役員は冒頭、「クラブ単体では大きな成果を出すことやインパクトを出すことが難しい社会・地域課題にも、地域の自治体、学校、高齢者施設、NPO法人などのステークホルダーの力を借りて向き合ってきた」とシャレン!の意義を紹介した。

また、「2023年から『ピープル』『コミュニティ』『プラネット』の3つの柱を軸にコレクティブにインパクトを出していこうと取り組みを進めているが、特に今年は『プラネット』に関するエントリーが増えた」と、昨今の環境課題への関心の高まりにも触れた。

Jリーグの辻井執行役員「日本の社会・未来の世代のためにできることをやっていく」
(写真提供:Jリーグ)

7回目となった今年は、鹿児島ユナイテッドFC、ヴァンフォーレ甲府、レノファ山口FC、横浜FC、水戸ホーリーホック、V・ファーレン長崎の6クラブの取り組みが受賞した。

■鹿児島ユナイテッドFC、無人の駅を地域の交流拠点に

地域の課題解決に果敢にチャレンジした取り組みに与えられる「ソーシャルチャレンジャー賞」には、鹿児島ユナイテッドFCが選ばれた。

同クラブは、専用トレーニングセンターの位置する鹿児島市南部の喜入(きいれ)地区で、2020年に無人化された喜入駅を地域の交流拠点へと整備した。

駅の無人化は、利便性や地域の防犯・防災機能の低下に加え、地域の活気が失われる原因にもなる。同クラブは、鹿児島市、JR九州、システム開発企業のエヌ・ケイ・カスタマイズ(鹿児島市)と連携し、交流拠点を軸に地域の賑わいを取り戻す取り組みをしている。

■ヴァンフォーレ甲府はパラスポーツセンターの指定運営者に

国・自治体の政策を活用し地域の課題解決に取り組んでいるとして「パブリック賞」を受賞したのはヴァンフォーレ甲府だ。

同クラブは、山梨県や山梨県障がい者スポーツ協会など12団体と連携し、「山梨県立やまなしパラスポーツセンター」の指定管理者に選出された。プロスポーツクラブが、パラスポーツセンターの指定管理を担うのは全国初の事例だ。

医療機関や大学と連携し、視覚障害サッカーや、ボッチャ、フライングディスクなどの普及活動を実施し、年間利用者数は当初目標の17000人を上回る24000人超に上った。

■レノファ山口FCは「探究型修学旅行」で関係人口を増やす

記者が選ぶ「メディア賞」を受賞したのは、レノファ山口FCの取り組みだ。中高生に探究学習プログラムを提供するTOKYO EDUCATION LAB(東京・港)とともに、山口の地域課題や魅力を探究する修学旅行のプログラムを共同開発した。

地域を「知ること」から「関わること」へ、訪問者の「また来たい」を「関わり続けたい」へ変えることで、関係人口・交流人口の創出につなげている。修学旅行で訪問後、家族旅行で山口を再訪した学生や、山口大学への進学挑戦など、当初想定していなかった行動変化も生まれたという。

■横浜FC、ホスピス入居者の幸福寿命を支える

地域社会とのつながりの創出に貢献した取り組みとして、「明治安田・地元の元気賞」に選ばれたのは、横浜FCの取り組みだ。同クラブは、医療・介護現場と連携し、4年間外出がかなわなかったホスピスの入居者をスタジアムへ導くなど、スポーツが「幸福寿命」を支える可能性を示した。

この取り組みは、高齢者施設で暮らす全国のシニアサポーターが地元のJリーグクラブを応援する「Be supporters!プロジェクト」の一環だ。「Be supporters!プロジェクト」は、サントリーウエルネス(東京・港)が推進している。

本賞のプレゼンターとして登壇した明治安田グループの永島英器グループCEO兼CSuOは、「地元地域にこそ素晴らしい美しい物語があると強く感じた。難病を抱える方に、最期の瞬間まで輝いてほしいという素晴らしい想いのある取り組みだ」と称えた。

■水戸ホーリーホックは、「電気も野菜も育てる」

各Jクラブが選ぶ、自クラブや自地域でも実施したい取り組みとして、「クラブ選考賞」を受賞したのは、水戸ホーリーホックの営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)の取り組みだ。

同クラブは、農家の高齢化や耕作放棄地の増加といった課題が進行する中で、ソーラーシェアリングを生かした地域循環共生圏を作った。ソーラーシェアリングの展開に実績のあるTERRA(東京・新宿)やUPDATER(東京・世田谷)のほか、常陽銀行やJAグループ茨城など8団体のほか、地域の人々とも連携した。

この取り組みはすでに複数のJクラブが自地域での展開に関心を示しているという。

■V・ファーレン長崎は長崎市のスポーツ消費を九州一に

ファン・サポーターが、自分の応援するクラブでも実施してほしい活動に投票する「ファン・サポーター選考賞」には、V・ファーレン長崎の「オール長崎」プロジェクトが選ばれた。

同クラブは悲願のJ1昇格に向けた機運醸成に、県全域で、応援Tシャツの着用や多拠点でのパブリックビューイングなどを実施した。応援機運の高まりで、1世帯の年間スポーツ観戦消費額は全国最下位(2022年)から全国3位(2025年)に浮上し、長崎市は九州で最もスポーツ消費が活発な都市になった。

■表彰式もサステナブルな運営に

「地域のハブとして、多くの方々に、『協力して環境や社会に良い取り組みをやっていこう』と言っているが、そう言う自分たちが実践できていなければ説得力がない」(Jリーグ・辻井執行役員)との考えから、今回の表彰式はサステナブルな運営を徹底した。

会場は、明治安田生命の協力で、「再エネの導入など、サステナビリティに配慮した会場」で表彰式を執り行った。

また来場者には、事前のウェブでの参加申し込み時に会場までの交通手段の入力を求め、移動に伴うCO2排出量の測定を行った。申し込み時には、会場に給水サーバーがあることを案内し、来場者にマイボトル持参を奨励した。

表彰式の式次第には卵の殻を使った紙を使用したほか、受賞者に贈呈する花束は、規格外のロストフラワーを活用した。

イベント運営には、障がいのある方もない方もともに活躍できるインクルーシブデザインを追求する特定非営利活動法人ピープルデザイン研究所が関わった。表彰式の開始時には、照明を落として光を点滅させるなど、聴覚障害のある方に配慮したサインを送ったほか、ステージ上には常に、手話の同時通訳者が立った。会場の受付係や、盾や花を贈呈する進行補助役として、障がいのあるスタッフも活躍していた。

「誰もが参加できる」ことを目指すJリーグのサステナビリティの姿勢が、会の運営でも体現された形だ。

北村(宮子)佳代子(オルタナ輪番編集長)

北村(宮子)佳代子(オルタナ輪番編集長)

オルタナ輪番編集長。アヴニール・ワークス株式会社代表取締役。伊藤忠商事、IIJ、ソニー、ソニーフィナンシャルで、主としてIR・広報を経験後、独立。上場企業のアニュアルレポートや統合報告書などで数多くのトップインタビューを執筆。英国CMI認定サステナビリティ(CSR)プラクティショナー。2023年からオルタナ編集部、2024年1月からオルタナ副編集長。

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キーワード: #サステナビリティ

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