■「ESG経営の終焉」ではない■
ダノンは3月、エマニュエル・ファベールCEOを解任したと発表した。これは「ESG経営の終焉」ではなく「競合に勝てず業績・株価が低迷している」や「ガバナンスや将来収益創出に疑問が残る」なことが主な原因とされている。ESGは業績向上の言い訳にならないのである。短期では結果が出にくいサステナビリティ推進活動をしながら、直近での売上および株価の向上もする。この一面で矛盾するからこそ、実際に到達できた企業は本物のESG先進企業として称えられるのだ。(CSRコンサルタント=安藤 光展)

ヨーグルト製品や飲料水で知られるダノンは3月、エマニュエル・ファベールCEOを解任したと発表した。サステナビリティ界隈では世界トップレベルとよく事例紹介される企業であるだけに、何が起きたのかと話題になったが、この数ヶ月の様々な分析記事を見聞きする限り、「ESG経営の終焉」ではなく「競合に勝てず業績・株価が低迷している」や「ガバナンスや将来収益創出に疑問が残る」なことが主な原因とされている。
長期ビジョンの推進に加えて、収益改善も急いだが、短期的な改善を求める投資家を説得できなかった。つまり、ESGの先進的な取り組みを財務インパクトに転換できなかったわけである。
5月にはフランスを水源地とするミネラルウォーター「ボルヴィック」に対して、地元住民や地質学者は過剰な採水により、地域一帯が危険にさらされていると警鐘を鳴らしていると報道された。
ボルヴィックはエビアンと同じく親会社はダノンだ。ボルヴィックは、コーズマーケティング「1L for 10L」で日本でも有名なブランドだ。昨今、水問題は世界中で問題になっているのに、このニュースが本当であれば、ダノンは形だけのESGであったと報道されても仕方がないかもしれない。2020年にはダノン日本法人が、サステナビリティ企業認証「Bコープ」を認証していたが、残念である。
今回はダノンの事例を取り上げたが、日本企業でもESG高評価で財務や株価が低パフォーマンスなところはいくつもある。CEOが早急にクビになることはないだろうが、いつアクティビストから要請されても不思議ではない。
これらのニュースから確実に言えることは一つだけある。ESGは業績向上の言い訳にならないのである。短期では結果が出にくいサステナビリティ推進活動をしながら、直近での売上および株価の向上もする。この一面で矛盾するからこそ、実際に到達できた企業は本物のESG先進企業として称えられる。
長期視点は重要、しかしそれと同時に株価・業績の向上があってこそ。つまり、ESGはビジネスの前提であり株価・業績の言い訳にはならないのだ。長期にコミットし短期の成果を上げる。上場企業に求められるハードルは確実に高まっている。