SDGs(持続可能な開発目標)達成へ、日本企業も動く

世界が直面する諸問題の解決をめざす国連のSDGs(持続可能な開発目標)は、各国政府はもとより企業・団体・市民にも問題解決への関与と努力を求める。とりわけ「格差の解消」「良い仕事と経済発展」「責任ある消費」などは企業活動に直接関わる課題だ。日本企業の間でもSDGs達成への努力が始まった。(オルタナ編集委員=斉藤円華)

■労働環境改善図る「ベターワーク」の試み

上場企業を中心に200社以上が加盟する「グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン(GCNJ)」は18日、都内でSDGsに関する勉強会を開いた。同団体は企業の持続可能な成長に向け、人権・労働・環境・腐敗防止の4分野10原則で行動規範を定める「国連グローバル・コンパクト」に署名する企業で構成。ILO(国際労働機関)などで勤務した浦元義照・上智大特任教授が、途上国での労働環境の改善を図る「ベターワーク・プログラム」について報告した。

バングラデシュの縫製工場の様子(「ベターワーク」HPから引用)
バングラデシュの縫製工場の様子(「ベターワーク」HPから引用)

ベターワークはILOとIFC(国際金融公社)が協同して行うもので、企業活動のサプライチェーンにおける労働条件、生産性および品質の改善をめざす。縫製や食品、電子機器の組立といった労働集約型産業が対象で、現在ベトナムやヨルダンなど8か国で実施している。

「企業の生産拠点が途上国に移転する中で、サプライチェーンを管理するシステムがぜい弱になっている。現地で労働法令が整備されていても、実際の労働現場では法との落差がみられる。この是正は先進国におけるCSRの課題だ」(浦元氏)

バングラデシュでは2013年4月に縫製工場ビルが倒壊し、女性縫製労働者ら約1千人が死亡。工場は欧州大手ファッションブランドから製造を請け負っていた。事件を機に、同国では縫製産業における労働環境改善の取り組みが促された。

バイヤー(発注企業)とサプライヤー(請負企業)、労働者代表や政府などが参加する同プログラムでは、工場における労働法令遵守を中心に評価を実施。監査や改善活動が行われ、成果は公表される。バングラデシュでのベターワークは14年から始まり、現在94の工場、ギャップやプーマ、H&Mなどバイヤー18ブランドが参加。労働者数は18万人以上に上る。

取り組みの結果、参加工場における労働環境保全の不遵守率で、最低賃金が13%から8%、工場の安全管理で93%から44%などと改善が見られた。プログラムは継続中で、参加工場はさらに増やす方針だ。

■共通仕様の「SAQ(自己チェックシート)」策定へ

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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