原田勝広の視点焦点:「青い地球」を守る賞

原田勝広
オルタナ論説委員

さて、今年です。ミネソタ大学のデイビッド・ティルマン教授とシンクロニシティ・アース戦略的保全部長のサイモン・スチュアート博士のふたりに決まりました。

スチュアート博士は、絶滅危惧種レッドリストのためのカテゴリーと定量的な基準の開発を主導し、評価対象種の拡大に功績があります。

一般にもよく知られているので、もうひとりのティルマン教授について触れたいと思います。彼は国際生物学賞を受賞するなど、専門は環境学者です。生物多様性と生態系、持続可能な農業などに関し重要な提言を行ってきました。

それが、今回は食の問題に環境という新たな視点を導入し「肉食中心の食習慣が生活習慣病の増加を招き、食料増産のための土地開墾と温室効果ガスの排出量を増やす」と地球環境に悪影響を与え、SDGsにもよくないことを明らかにした点が評価されました。

ティルマン教授と共同研究者は、食物群による糖尿病、脳卒中、冠動脈疾患、ガンなどの疾病罹患率、冠動脈疾患の死亡率、および環境への影響(温室効果ガス、水質公害など)を科学的データに基づいて定量的に精査しました。それによると、野菜、果物、ジャガイモなどが死亡リスク、環境への影響ともに低いのに対し、赤肉(牛、豚、羊)は両方とも高い。つまり、健康に悪く、環境にも影響が大きいという結果になりました。「食習慣、健康、環境」のトリレンマこそが世界的な重要課題なわけです。

最近は温暖化ばかりが話題になっていましたが、コロナのおかげで感染症が身近な脅威になりました。それは私たちの健康にかかわるからです。ことし、健康を食生活と環境の視点で研究を続けるティルマン教授が受賞したのもひとつの警鐘かもしれません。

受賞者の環境問題への貢献は言うまでもありませんが、こうした人たちの活動を長い間丁寧にフォローし、顕彰する組織が存在することにも大きな意味があるのでしょう。

「青い地球」を賞が守っているわけです。財団のあり方について改めて考えさせられます。
                              (完)

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原田勝広
オルタナ論説委員
日本経済新聞記者・編集委員として活躍。大企業の不正をスクープし、企業の社会的責任の重要性を訴えたことで日本新聞協会賞を受賞。明治学院大学教授に就任後の専門は国連、CSR, ESG・SDGs論。2018年より現職。著書は『CSR優良企業への挑戦』など多数。

2020年6月24日(水)10:54

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