プラの「サーマル」はリサイクルではない(下)

栗岡 理子
オルタナ編集委員、環境ジャーナリスト

■ プラスチックの「サーマル」はリサイクルではない(上)

海洋プラスチック汚染は途上国の問題で、「日本からはそれほどプラゴミを海に出していない」という意見をよく耳にする。リサイクルでも「CO2は出るのだから、燃やして発電する方が手っ取り早い」という意見もある。そうであれば、そんなに頑張ってリサイクルに取り組む必要はないと思われても不思議ではない。(編集委員・栗岡理子)

製品プラスチックのリサイクル

イベント会場のごみ

しかし、製品をできるだけ長く使い、使えなくなったものはリサイクルすることで、新たに採掘する天然資源量を最小限にとどめ、循環型社会を実現することは、いまや世界的な課題だ。

とりわけプラスチックのように、膨大に使われながらも分解されにくいものは、使用量そのものを削減する一方で、できるだけリサイクル率を高める必要があるだろう。国がいま方針を固めつつある「製品プラスチック」のリサイクルも、こうした方向に沿うものだと思われる。

製品プラスチックとは、ポリバケツやおもちゃ、文房具などのプラスチック製品のことだ。これまでは容器包装リサイクル法のもと、プラスチックは家庭からでる容器包装のみがリサイクルの対象だった。

製品プラスチックもリサイクルすることになれば、ペットボトル以外のプラスチックは、容器包装であろうとなかろうと「プラスチック資源」として一括回収することが推奨される。

まだ詳細は不明だが、一括回収が開始されれば、市民がいちいち「コレ容器包装?」と悩むこともなくなる。しかも製品プラスチックは、樹脂が複層になっていたり複合素材だったりすることの多い容器包装よりもリサイクルしやすいため、再生樹脂量が増えるなどのメリットもある。

リサイクルのために、税金を費やすべきか?

とはいえ、課題もある。一括回収によるプラスチックの回収費用は誰が出すのだろうか。現在約7割の自治体が、ペットボトル以外の容器包装プラスチックの分別収集をすることで、プラスチックのリサイクルに貢献している。

法律があるにも関わらず、7割の自治体しか参加していない理由は、容器包装プラスチックの分別収集・選別保管にお金が掛かるためだ。2017年の統計調査に回答した1452自治体だけでも、642億円もの費用がかかっている。キャンディーの個包装1つにも税金が投入されているのだ。

その一方で、容器包装プラスチックを自治体の焼却炉で燃やして発電の熱源とし、発生した電力を売った自治体は売電収入を得ている。

とりわけ、巨額を投じ、エネルギー回収型の廃棄物焼却施設を作った自治体にとって、製品プラスチックは発電のための貴重な「燃料」だ。とくに雑がみ(雑紙)などまでしっかり回収している自治体にとっては、カロリーの高いごみはプラスチック以外にあまりない。

製品プラスチックがなくなれば、売電収入が激減するうえに、分別収集・選別保管コストが自治体の財政を圧迫することになる。そうであれば、製品プラスチックもリサイクルしようといわれて素直にハイという自治体は、お金に余裕のある自治体に限られるだろう。

もし、筆者が市長でもこう言いそうだ。

「リサイクルの必要性は十分承知していますが、分別収集に税金を投じることはいたしません。CO2削減のためにもリサイクルは必要でしょうが、ない袖は振れないので、我が市はリサイクルに参加しません。でも、分別収集費用さえ生産者の方々にご負担いただけるならば、回収にはご協力します」

リサイクルは循環の輪を回すために

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栗岡 理子
オルタナ編集委員、環境ジャーナリスト
1980年代からごみ問題に関心をもち、活動しています。子育て一段落後、持続可能な暮らしを研究するため、大学院に進学。2018年3月博士課程修了(経済学)。専門は環境経済学です。著書に『散乱ペットボトルのツケは誰が払うのか』(合同出版)ほか。2019年からオルタナ編集委員。

2020年9月4日(金)19:35

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