欧州委員会が新CSR戦略――下田屋毅の欧州CSR最前線(1)

下田屋毅
サステイナビジョン代表取締役
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在ロンドンCSRコンサルタント・下田屋毅氏

欧州委員会はこのほど、欧州の新しいCSR戦略を公表した。欧州の経済危機の中で、欧州委員会がCSRの推進によって、「持続可能な成長」「責任ある企業行動」「中長期における持続的な雇用創出」の条件を整えることを主目的としている。

欧州委員会は、この新CSR戦略で「企業の社会への影響に対する責任」と再定義し、「株主、広くはその他ステークホルダーと社会の間で共通価値の創造を最大化すること」「企業の潜在的悪影響を特定、防止、軽減すること」の2つを推進していく。

欧州ではすでに、コンプライアンスや団体協約の尊重は前提条件としてうたっている。2011年1月にハーバード大学マイケルポーター教授が提唱したCSV(Creating Shared Value:共通価値の創造)を欧州委員会が反映したことは興味深い。

新戦略の中では、アクション2011―2014というアジェンダを発表、大きく分けて次の8つの内容が織り込まれた。

1.CSRの見える化の強化とグッドプラクティスの普及(2013年にマルチステークホルダーCSRプラットフォーム作成)

2.ビジネスの信頼性改善と追跡(グリーンウォッシング等の誤解を招くマーケティングに対する欧州指令発令による監視の強化)

3.自主規制、共同規制のプロセス改善

4.CSRの市場報酬の拡大(CSRの市場刺激策強化のために消費・公共調達・投資政策の面でテコ入れ)

5.企業の社会・環境の情報開示の改善

6.CSRを教育・訓練・研究に更に統合する(CSRに関する教育・訓練分野の財政援助の実施)

7.加盟国におけるCSR政策の見直し

8.CSR原則やガイドラインなどを考慮して世界と欧州のCSRアプローチの歩調を合わせる

8では、2010年11月に発行されたSRの国際規格であるISO26000がすでに中心的な役割を果たしている。具体的には、「従業員1000人を超える欧州のすべての大企業はISO26000を考慮し、自らモニタリングすること」「2014年までに欧州のすべての大企業は、国連グローバルコンパクト、OECD多国籍ガイドライン、ISO26000のうち少なくとも1つを考慮してCSR方針を作成すること」、多国籍企業も同じく「2014年までに「ILO多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言」の尊重にコミットすること」が求められている。

戦略の中には他に「国連ビジネスと人権に関する指導原則」についても触れており、前述のCSRの国際基準・原則と伴に、欧州企業に対し、これら国際的に認知された正式なCSRの基準・原則を積極的に活用してCSRに取り組むように促している。

このように欧州で活動する日本企業は、新戦略で掲げられているCSRの取り組みについて、ISO26000・国連グローバルコンパクト等の国際基準・原則の活用を考慮する必要に迫られており、まさにCSRのグローバル化が求められている。(在ロンドンCSRコンサルタント=下田屋毅)

下田屋毅
サステイナビジョン代表取締役
在ロンドン CSR コンサルタント。大手重工業会社に勤務、工場管理部で人事・総務・教育・安全衛生などに携わる。新規環境ビジネス事業の立上げを経験後、渡英。英国イーストアングリア大学環境科学修士、ランカスター大学MBA。欧州と日本の CSR の懸け橋となるべくCSR コンサルティング会社「Sustainavision Ltd.」をロンドンに設立、代表取締役。ビジネス・ブレークスルー大学講師。

2011年12月27日(火)11:33

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