日本企業のISO26000の取り組みは悪くない? ――下田屋毅の欧州CSR最前線(6)

下田屋毅
サステイナビジョン代表取締役
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在ロンドンCSRコンサルタント・下田屋毅氏

2011年10月に発行された欧州委員会の新CSR戦略の中で大きな柱となっているのが、「国際的に認知された原則やガイドライン」の活用である。

欧州連合は、これら国際原則やガイドラインを政策に統合していくことで、欧州のCSR政策を推進、そして欧州企業に対しては強い関与を求めている。

アクション2011‐2014のアジェンダの中で、欧州委員会は、

①従業員1000人を超える欧州の全ての大企業はISO26000を考慮し、自らモニタリングすること。

②2014年までに欧州の全ての大企業は国連グローバルコンパクト、OECDガイドライン、ISO26000の少なくとも1つを考慮してCSR方針を作成すること

③多国籍企業も同じく2014年までにILO多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言の尊重にコミットすること――としている。

この中の「国際的に認められたCSRの原則・ガイドライン」として、中心に位置づけられているのが、2010年11月に発行されたISO26000だ。現状、欧州と日本では、どの程度活用されているのだろうか。

まず、欧州のISO26000の活用状況についてだが、欧州のCSRを推進する多国籍企業が属する経済団体「CSRヨーロッパ」の加盟企業80社のCSR 報告書をサンプルとして、当社サステイナビジョンが独自調査を行ったところによると、CSR ヨーロッパのメンバー企業80社のうち13社(全体の16%)がCSR 報告書の中でISO 26000について記載している。

自社のCSR活動をISO 26000の7つの中核課題に割り振る「対照表」の掲載も見受けることができた。しかしISO26000について記載している多くの企業は、「今後ISO 26000の導入を考慮する」としているのみという状況である。

一方、日本のISO26000の活用状況だが、シータス&ゼネラルプレス社が日本企業のCSR報告書を対象に調査した2011年レポートによると、日本企業134社のうち実に45社、37%の企業がISO26000を活用しているという結果だった。

サンプルの違いがあり、一概に単純比較はできないが、ISO26000の取り組みについては、日本企業は積極的な傾向にあると考えて良い。

こちらロンドンのCSR関係者との会合においても、世界の中でISO26000の良い取組事例がないかを探しているという状況だった。そして先進取組事例として、日本の企業では、NEC、東芝、トヨタなどの企業名も上げられている。

ISO26000への取り組みの比較だけで、企業のCSRプログラムの良し悪しを図ることはできないが、日本企業にとって、国際的に認められたガイドラインの活用は、自社のCSRプログラムを改善する良いきっかけとなる。

この機会にISO26000を「社員へのCSR浸透研修」への使用や、「企業経営陣がCSRの理解を深めること」に活用するとともに、企業全体として「戦略的にCSRを推進していくこと」へ発展させていくことへの足掛かりとすることを検討されてはいかがだろうか。(在ロンドンCSRコンサルタント・下田屋毅)

 

下田屋毅
サステイナビジョン代表取締役
在ロンドン CSR コンサルタント。大手重工業会社に勤務、工場管理部で人事・総務・教育・安全衛生などに携わる。新規環境ビジネス事業の立上げを経験後、渡英。英国イーストアングリア大学環境科学修士、ランカスター大学MBA。欧州と日本の CSR の懸け橋となるべくCSR コンサルティング会社「Sustainavision Ltd.」をロンドンに設立、代表取締役。ビジネス・ブレークスルー大学講師。

2012年2月9日(木)9:37

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