記事のポイント
- 就職活動で、企業のサステナビリティに対する姿勢を重視する学生は多い
- 専門家らは、データで可視化できる企業のサステナ本気度を公開する
- GHG高排出の日本企業トップ100社を、ジェンダー平等の視点でも分析して示す
就職先を選ぶ際に、気候変動対策やジェンダー平等に対する姿勢を重視する学生が増えている。気候変動やダイバーシティ(多様性)の専門家らは、学生らに向けて、企業のサステナビリティへの本気度をデータで可視化した。温室効果ガス(GHG)排出量の多い日本企業100社をランキングしたほか、ジェンダー平等への取り組みについても分析した。(オルタナ副編集長・北村佳代子)
気候変動やジェンダーダイバーシティの専門家らが立ち上げた「本気でサステナブルカンパニー」プロジェクトでは、ウェブサイト上で、GHG排出量の多い日本企業100社のリサーチ結果を公表した。
ランキングのベースとしたのは、環境省・経済産業省が2022年12月に公表した、2019年度GHG排出量の集計結果だ。今年は、リサーチ対象企業数を昨年の50社から100社に拡大し、男女間賃金格差に関する情報も加えた。
■企業の「サステナ本気度」が伝わる評価基準とは
同プロジェクトメンバーの一人、特定非営利活動法人ジェンダー・アクション・プラットフォーム(東京・港)の大崎麻子理事は、「何となく環境やダイバーシティに取り組んでいそうだといった感覚で選ぶのではなく、根拠のあるデータを見て選べるように、ファクトを示し、手助けしたい」と語る。
本プロジェクトが企業のサステナ本気度を見る上で評価・分析した基準は以下の9つだ。
- 社長がグローバルな長期視点を持ち、サステナビリティメッセージを発信しているか(国連グローバル・コンパクトに署名しているか)
- 社長がジェンダー平等へのコミットメントを表明するメッセージを発信しているか(「女性のエンパワーメント原則」(WEPs)に署名しているか)
- 男性と女性の賃金はどのぐらい違うか
- 女性が確実にキャリアアップできる環境は整えているか(女性管理職比率、女性執行役員の人数・男女比率)
- 男性も家事・育児・介護などのケアワークが担えるような柔軟な働き方ができるか(男性の育児休暇取得を推進するための取り組みを行っているか、男性育児休業取得状況)
- 2050年までのカーボンニュートラル宣言を行い、長期的に持続可能な企業なのか
- 超長期視点で事業における気候変動のリスクと機会を分析して開示しているか(TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に賛同しているか)
- パリ協定が定める水準で2030年までのCO2削減目標(SBT: Science Based Targets、科学的根拠に基づく目標)はあるのか
- 若者やNGOなど未来世代とのエンゲージメント(対話)を行っているか
■若者世代に選ばれない企業は、サステナブルな存続も危うい
人口減少社会では、若者から評価され「選ばれる企業」にならないと、人材の獲得・定着が難しくなり、事業の存続や企業としての持続可能性も危うくなる。
例えば、就職活動中の学生は、オルタナの取材に対し、「日本企業はエントリーシートの性別欄に、男女の2択、もしくは男女のほかに無回答といった選択肢を用意している。しかし、複数の外資系企業は、性別についての回答欄そのものがなかった」と、指摘した。
別の20代の社会人は、「そこまで高齢ではない世代の先輩が、ジェンダー差別的な発言をしていて、周りもそれを許容しているのに幻滅した」ことが、大企業から転職した理由だと語る。
企業は若者の経験や価値観を理解しようとしているか。「本気でサステナブルカンパニー」プロジェクトは9つめの評価基準として、企業のエンゲージメント姿勢をチェックし、「サステナブルへの本気度」を問う。
「本気でサステナブルカンパニー」が公表した「温室効果ガス(GHG)排出量の多い日本企業100社」のリストは、こちらから。