記事のポイント
- ESG(非財務価値)と企業価値の関係性を分析
- 俯瞰型分析で遅延浸透効果を示す
- 即効性のある遅延浸透効果が短かった指標は、人的資本関連指標
日清食品ホールディングス統合報告書2023ではCSOが、非財務価値と企業価値の関係性を分析する「俯瞰型分析」は、ESG活動(KPI)を1%改善した際、何年後の何%のPBR向上につながるのか「遅延浸透効果」を示すと述べています。遅延浸透効果が短かった指標は、企業価値向上へ即効性のある指標となります。分析の結果、遅延浸透効果が短かった指標は、育児時短勤務、海外トレーニー制度利用者数等人的資本関連項目でした。(オルタナ総研フェロー=室井孝之)

日清食品ホールディングス統合報告書2023(VALUE REPORT2023)において、横山之雄取締役・CSO兼常務執行役員は、経営全体をサイエンス面から支え、指揮する「コーポレート・サイエンティフィック・オーケストレーター」というビジョンを持って取り組んでいる。特に注力しているのは、「ESG(非財務価値)と企業価値の関係性に関する定量・定性分析だ」と明言しています。
同社のESG (非財務) の取り組みがどのようにReturn (企業価値) に関係しているかを定量的に表す「俯瞰型分析」は、ESG指標とPBRの直接の相関を分析する柳モデルを活用しています。
ESG活動(KPI)を1%改善した際、何年後の何%のPBR向上につながるのか(遅延浸透効果)を示すことができます。
具体的には、「育児短時間勤務:女性」は、「1年後に+0.6%」、「プラスチック使用量」は、「4年後に+1.2%」、「CO2排出量」は、「9年後に+0.8%」、「水使用量は5年後に+3.2%」等という関連性があるとの結果が出ました。
「遅延浸透効果」が他社平均より短い指標が、自社にとって企業価値向上へ即効性のある指標となります。
今回の比較で遅延浸透効果が短かった指標は、育児時短勤務や海外トレーニー制度利用者数といった人的資本関連数項目に多く見られました。
横山CSOは、多くの企業が直面する「ESGの取り組みは、本当に企業価値向上につながるのだろうか?」という命題への挑戦だ。「施策の実効性を評価・モニタリングする体制を強化し、データの質を向上させていくことが課題」と強調しています。
今後のVALUE REPORTでは「施策の実効性を評価・モニタリングする体制」を紹介されてはいかがでしょうか。