CSRの観点から見た、阪急阪神ホテルズ事件の教訓(下)--不祥事の防止は「良いこと」をし続けるしかない

では、どんな対策が有効なのだろうか。筆者は、社員一人ひとりが「プライド」を持つこと以外に無いと考える。

2年ほど前の「オルタナ」とのインタビューで、損害保険ジャパンの佐藤正敏会長(当時)は「CSRを徹底することで、社員たちがコモンセンス(常識)を発揮できる。一人ひとりが誇りを持つようになる」と明言していた。

きちんと社会的責任を果たす、CSR活動に積極的に取り組むメリットは、社会からの良い評判(それが顧客創造につながる)を得るだけではなく、社員のプライドを高める効果にある。

社員10人ほどの小さな造園会社、石井造園(横浜市)の石井直樹社長は「ウチは法令遵守以前に、『後でバレてカッコ悪いこと』はやらない。社員たちにはそう教えています」と言い切る。

ビジネスには、たびたび判断が難しい「グレーゾーン」の領域がある。そこで、後で恥ずかしい思いをしないような行動を取るためには、社員、中間管理職、経営陣の各層が、それぞれプライドを持つことが重要になってくる。

「そんな簡単にプライドを持ってもらえるわけが無い」。そう反論する経営者もいるだろう。社員にプライドを持ってもらうためには、経営者がプライドを持ち、部下たちに伝えていくしかない。経営者になければ、社員たちがプライドを持てるわけが無い。

当社はこんな素晴らしい事業をしている、こんなに社会に貢献しているという「ソーシャル・グッド(社会に良いこと)」を、常日頃から社員と共有することが重要だ。

「うちはそこまで立派なことをしていない」。そう考える経営者もいるだろう。そういう会社は、何か一つでも良いから、小さなことでも良いから、「社会に良いこと」を始めてみると良い。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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