おそらくは大雪の中で食料品を買い求める客が詰めかけ、店内での混乱を避けようとした措置だったのだろう。しかし、ソーシャル・メディアでは、外で長時間待たされた客から不平不満の声が多数流れた。
この件がコンビニ運営会社の株価を左右したとまでは言えないだろう。しかし、大雪の中で辛い思いをした客たちが、「二度とその店に行かない」と思ったとしても不思議ではない。数十メートルしか離れていない他のコンビニを選ぶのは簡単だからだ。
企業への社会的評価が株価をも左右する事例は増えている。
鎌倉投信が企業の社会的評価を基準に運用する「結い2101」の実績リターン(累積)はこの3年間で、TOPIX(東証株価指数)を19%上回った。
「結い2101」の投資対象はツムラ、未来工業、エフピコなど合計44の上場企業で、これらの投資先は「人」「共生」「匠」という3つの評価軸で選定してきた。
具体的には高齢者、障がい者、女性など雇用面でのダイバーシティ、循環型社会の再構築など環境面での配慮、第一次産業の再生などに積極的な企業が選ばれる。
オルタナ35号で特集した「ソーシャル・ブランディング」は、こうした企業の社会的な活動が将来の顧客や投資家を創造し、中長期的に企業の価値(株式の時価総額)を高めていくという意味だ。
もう一度、山崎製パンの事例に戻ろう。報道では、同社には災害時に無料でパンを配るという規定があったわけではない。それにも関わらず、運送トラックの運転手が、災害現地でパンを配ろうと判断したのは、常々、「社会や困った人のために何か役に立ちたい」という意識が備わっていたからだろう。