ニホンウナギの絶滅危惧種指定、スーパーや外食企業は神経とがらせる

■「複数種のウナギが混入」の例も

今回のDNA不一致について、ウナギの流通特性による「混入の可能性」を指摘する意見もある。日本鰻輸入組合の森山喬司理事長は「シラスウナギが十分に育つまで3~4年かかる。現在養殖として流通しているのは、問題意識が高まる前に池入れされたもの。過渡期である今の段階では原因について判断しにくいものもある」と話す。

また、海域によっては、複数の品種が同時に採捕できるので、あえて分けなければ混ざっている可能性はある。北里大学海洋生命科学部の吉永龍起講師による研究で、1パックの中に複数の品種が混合していた例も確認されている。

そのため、グリーンピース・ジャパンは「持続可能なウナギのためには、流通している品種の実態を把握し、よりリスクの少ないものを選択してゆくことが必要だ」として、「ヨーロッパウナギおよび品種を確認できないものは消費をさけること」などを提案している。同団体は7月10日、流通実態の調査と管理体制強化などを求めて、水産庁に要請書を提出した。

■消費者にも慎重な購買行動が必要

グリーンピース・ジャパン海洋生態系担当の花岡和佳男氏は、市場の問題点として「『中国産ウナギ』などのように、品種表示がないまま売られている」ことを指摘する。

「品種の表示がなく、消費者が選択できない形になっているのも問題。スーパーなど企業は消費者の声に敏感なので、ぜひ消費者には『絶滅危惧種なら食べるのを止めよう』『回復するまでは我慢しよう』といった行動をしてほしい」(花岡氏)

多くの日本人にとって「好物」のウナギだが、シラス不漁が続く限りは、消費者にも慎重な購買行動が求められている。

■問われる大手流通の責任

ワシントン条約の規制対象種を輸入するためには、輸出国の管理当局が発行する輸出許可書の取得など所定の手続きが必要だ。逆に言うと、輸出許可書さえあれば、絶滅危惧種でも輸入・販売することができる。

そのため、店頭では今後も、ヨーロッパウナギが並び続ける可能性すらある。このような状況が続けば、世界のウナギの7割を消費する日本に対して、海外や国際機関から非難が高まることも予想される。

グリーンピース・ジャパンは「シラス不漁は、日本の大手スーパーなどによる薄利多売の販売モデルによるところが大きい」と指摘する。こうした批判が高まらないようにするためにも、日本の大手流通や外食産業は、先手を講じることを求められている。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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