オルタナ78号「漁業トピックス」50
太平洋クロマグロの資源量が、回復傾向にある。クロマグロは太平洋の熱帯・温帯に分布する大型魚で、寿司ネタなどに使われる。しかし過剰漁獲によって、2010年に漁業開始以前の推定資源量の1.7%にまで減少した。それが2022年には10年比10倍の14万4000トンに回復した。
日本を含む各国政府や漁業関係者、企業が連携して漁獲規制に取り組み、産卵する親魚の量が増えたためだ。これを受け7月、釧路で開催したWCPFC(中西部太平洋まぐろ類委員会)では、日本の大型魚の年間漁獲枠を1.5倍に拡大することに合意した。
生物多様性の回復に取り組む環境NGO・WWFジャパンは「ネイチャー・ポジティブの好事例として歓迎する」と声明を発表した。その一方で「漁獲枠を増やす場合には科学的勧告に基づくとともに、資源量の増加傾向が維持される漁獲水準を維持すべき」と提言した。
漁獲量が回復したといえ、気候変動による海面温度上昇を止めなければ根本的な解決にはならない。漁業を取り巻く状況は依然として予断を許さない。