オルタナ79号・連載「欧州CSR最前線」52
記事のポイント
- EU(欧州連合)と英国が、森林破壊に関するデュー・ディリジェンス法を導入へ
- 欧州でビジネスを行う企業などを対象に、デュー・ディリジェンスを求める
- CSDDDへの対応も含め、企業は一貫した取り組みが求められる
EUは「欧州森林破壊防止規則(EUDR)」を、英国は森林破壊に関するデュー・ディリジェンス(DD)法案の導入を検討している。いずれも企業などを対象に、デュー・ディリジェンス(リスクの特定や防止)を求めるものだ。同じくEUで導入される企業サステナビリティ・デューデリジェンス指令(CSDDD)も含め、企業は一貫した取り組みが求められている。

森林破壊は依然として続いている。2023年の熱帯原生林の総損失は370万ヘクタールに上った。これは、1分間にサッカー場約10個分の森林が失われていることに相当する。
急激な森林減少により、2.4ギガトン(Gt)のCO2が排出された。これは、米国の年間化石燃料排出量のほぼ半分に相当する。
新たな法案はこうした状況に歯止めをかけ、ネイチャーポジティブの実現を目指す意図がある。EUDRは、EU内で取引される商品に対して、その原材料が森林破壊に関与していないことを確認する義務を課している。
具体的には、大豆、パームオイル、牛肉、コーヒー、カカオ、木材、ゴム、紙製品など、森林破壊のリスクが高い品目が規制の対象となっている。
一方、英国の法案は、企業が自社のサプライチェーン内で、森林破壊を防止するために行うリスク評価や対策を義務付けるものである。EUDRよりも広範なアプローチを取り、企業が自発的にサプライチェーン全体にわたって森林破壊リスクを評価し対策を講じることを目的としている。
このため、特定の商品リストは設けられておらず、企業は自社のサプライチェーンにおける紙製品、農作物全般、繊維(コットンなど)、その他の木製製品などを含むすべての製品と材料についてリスク評価を行うことが求められている。