企業が支援する「トビタテ!留学JAPAN」、日本を変えるか

■ 300人以上が59カ国に留学

2014年夏に開催された第1期派遣留学生壮行会で
2014年夏に開催された第1期派遣留学生壮行会で

原田 トビタテ留学は現在、第2期の募集が終わり審査に入って段階だが、大学、学生からの評判はどうか。

船橋 第1期では、221大学から1700人の応募があり、323人が合格し、59カ国に飛び立っている。大学も学生も「こういうものを待っていた」というのが第一声。これまでの留学は規制が多かったが、トビタテに応募する留学計画は基本的に自由に立案できる。資金的な支援も月額12~20万円と手厚い。

一番倍率が高かったのは「多様性人材コース」。首都圏からの応募と欧米向けが多かったので、今後の課題は地方からの応募と理系を増やすこと。

原田 どんな学生が応募していきているのか。

船橋 事前研修で学生同士が「今まで出会ったことがないおもしろい人が一杯いる」と話していた。

面接試験には企業から採用担当者が60人参加している。自社での就職採用時に学生を見ている人達だが、「何社も受ける就活と違い、トビタテ留学では皆、自分の思いを持っている。発する熱量が違う。こんな学生がいるんだ」とおおいに刺激を受けていらっしゃるようだ。

留学生には帰国後、伝道師として大学で講演をしてもらうし、留学からの帰国後は、学生に周囲に留学成果を自ら企画して発表してもらう以外に、我々で公平な機会を提供し、選抜メンバーのみTEDxトビタテ!のようなことが出来たらよいなと検討を開始している。

原田 それは素晴らしいアイデア。是非、一般学生に公開してほしい。話を聞いて留学を志す学生も出てこよう。いい流れができれば日本も変わる。トビタテ留学の可能性に大いに期待している。

プロフィール:船橋力(ふなばし・ちから)
1994年上智大卒。伊藤忠商事を経て2000年ウィル・シード設立。2009年に世界経済フォーラムのヤング・グローバル・リーダーズに選出される。河合塾顧問、教育支援グローバル基金Beyond Tomorrow創設者代表、TABLE FOR TWO International理事。

<インタビューを終えて>
絵に描いたようなグローバル人材ともいうべき船橋さんだが、父親の仕事で海外にいた子ども時代は苦労したという。南米の白人国、アルゼンチンではアジア人ということで差別を経験。逆にブラジルでは、多様性を受け入れる柔軟性に世界の広さを実感したようだ。世界の最先端を走ってきた日本も、30年後、50年後はあやしい。そのことを今から実感し、危機感を持っている人達が存在することはうれしい。大所高所から物を言うのではなく政府の中には入り込んで政策を動かしていることにも共感を覚える。高校生、大学生への支援を通して日本がどこまで変われるか、いま壮大な実験が始まったといえよう。

harada_katsuhiro

原田 勝広(オルタナ論説委員)

日本経済新聞記者・編集委員として活躍。大企業の不正をスクープし、企業の社会的責任の重要性を訴えたことで日本新聞協会賞を受賞。サンパウロ特派員、ニューヨーク駐在を経て明治学院大学教授に就任。専門は国連、 ESG・SDGs論。NPO・NGO論。現在、湘南医療大学で教鞭をとる。著書は『国連機関でグローバルに生きる』など多数。執筆記事一覧

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