■日本型の「共有価値創造戦略」(CSV)「発信型三方よし」
競争戦略の権威である米国のマイケル・E・ポーター教授らによる、自社の利益と社会価値の同時実現を目指す「共有価値の創造」(CSV)という新たな競争戦略が注目されています。
具体的には、(1)製品・市場の見直し、(2)生産工程(バリューチェーン)の見直し、(3)産業集積(クラスター)の形成の3つのアプローチがあります。米国発の考えで、外国の事例や英語の焼き直し的説明などが多く、日本人には自分ごと化しにくいので、本書では身近な事例を取り上げ、この3類型に分けて説明しました。
「共有価値の創造」の視点で事例を見ていくと、世界一厳しいといわれる日本の消費者ニーズに対応している最新のトレンドも含めて、さまざまな分野で関係者連携・協働による「協創力」により、成功している企業の姿に驚かれることでしょう。
これを考えてみるに、日本では、現在の滋賀県の近江商人の経営理念である「三方よし」(自分よし、相手よし、世間よし)のように、もともとあった考えです
この2つの考えは似ていますが、実は、重要な違いがあります。三方よしと並んで、同様に心得とされる「陰徳善事」があるからです。これは、「人知れず社会に貢献しても、わかる人にはわかる」という意味です。
日本人の美徳ですが、グローバルには通用しないので、三方よしを、社会対応力、共有価値創造力、発信力の3要素で補正した「発信型三方よし」を、「協創力が稼ぐ時代」における新たな経営戦略として提唱しています。これが日本型の共有価値創造戦略となるでしょう。
■「企業の社会的責任」を再考する─「企業の社会対応力」と理解