激減と激増、島に生きる2種のトカゲ――私たちに身近な生物多様性(14)

ホンドイタチは、関東以西では、大陸から移入された、やや体の大きいチョウセンイタチにとって代わられ、関東地方でも、平野部は既にチョウセンイタチが主に占拠するところとなっている。グリーンアノールも、原産地のフロリダ周辺では、中米から持ち込まれたブラウンアノールによって生息域を狭められている地域があると聞く。

こちらも小笠原のグリーンアノール。身体の緑色はオカダトカゲと対照的でもある(環境省外来生物対策室 提供)
こちらも小笠原のグリーンアノール。(環境省外来生物対策室 提供)

個々の生きものとして見たときは、彼らは何ら邪悪な生きものではない。生きものに対する邪悪、獰猛、凶暴といった形容は人間からの一方的なもので、生きもの自体に正邪がある訳ではない。

原産地においては、ホンドイタチもグリーンアノールも生物多様性の環を構成する重要な存在だ。しかし人間の営為によって、伊豆諸島や小笠原諸島に渡ったとき、離島の限られた生物相のなかで危うく保たれていたバランスを崩してしまった。そのため、かけがえのない在来種に対して、侵略的どころか破滅的な影響を与える存在となってしまったのだ。

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坂本 優(生きものコラムニスト/環境NGO代表)

1953年生。東京大学卒業後、味の素株式会社入社。法務・総務業務を中心に担当。カルピス株式会社(現アサヒ飲料株式会社)出向、転籍を経て、同社のアサヒグループ入り以降、同グループ各社で、法務・コンプライアンス業務等を担当。2018年12月65歳をもって退職。大学時代「動物の科学研究会」に参加。味の素在籍時、現「味の素バードサンクチュアリ」を開設する等、生きものを通した環境問題にも通じる。(2011年以降、バルディーズ研究会議長。趣味ラグビー シニアラグビーチーム「不惑倶楽部」の黄色パンツ (数え歳70代チーム)にて現役続行中)

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