フロン機器1万3000台をクラウド管理、全社で点検漏れ防ぐ

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■フロン管理の現場から―RaMS 導入事例紹介―(9)

「20 世紀最大の発明の一つ」とも言われたフロン(CFC:クロロフルオロカーボン)は、それまで有毒な冷媒を使っていた冷凍空調機に大きな進歩をもたらした。ところが、そのフロン類がオゾン層を破壊するメカニズムが発見され、世界で規制が進む。温暖化係数でみても、二酸化炭素の数百倍から1 万倍以上とされる。日本でも2020 年4月施行の改正フロン排出抑制法で、罰則が大幅に強化された。企業はどのようにフロン類を管理していけば良いのか。積極的に課題解決に取り組む企業を紹介する。(聞き手・弁護士=香川希理、記事・オルタナ編集部=辻陽一郎)

第9回 旭化成

環境安全部 山本 恵一 環境グループ長 

聞き手:香川 希理 弁護士(香川総合法律事務所代表、企業法務とフロン排出抑制法が専門)

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旭化成は1922年に創業し、総合化学メーカーとして現在は「マテリアル」「住宅」「ヘルスケア」の3領域で事業を展開する。2026年3月期連結売上高は3兆745億円、従業員数(連結)は4万7895人に上る。

旭化成は2015年ごろから「フロン管理」を強化した。フロン排出抑制法の対象となる機器は、グループ全体で約1万3000台に上るが、専用ツールを活用して、点検から記録まで一元管理できる仕組みを整えた。同社でフロン管理を担当する山本恵一・環境安全部環境グループ長は、「温室効果ガスを減らすために、フロンも減らす」と力を込めた。(連載・PR)

旭化成・環境安全部の山本 恵一・環境グループ長 

■RaMSを導入: フロン排出抑制法の施行に合わせて

――旭化成が脱炭素やフロンへどのように対応しているか、経営層の考え方について教えてください。

当社では、2030年に2013年度比でGHG排出量を30%以上削減し、2035年には40%以上削減する目標を掲げました。さらに2050年には、カーボンニュートラルつまり実質排出ゼロを目標にしています。

現在は技術系出身の経営層も多く、GWP(地球温暖化係数)の低い冷媒への切り替えを推進した中心人物が、現在は取締役に就いていることもあり、社内のフロンに対する理解は進んでいます。

――そうした目標がある中、RaMSの導入を決める上で、特にメリットや決め手になった点は何ですか。

RaMSは、フロン排出抑制法で求められる点検や記録を一元管理できるシステムになっている点です。そのため、法令遵守に必要な対応を、漏れなく確実に実施できる点が大きなメリットだと考えました。

RaMSに付属しているアラート機能によって、点検漏れを未然に防げる点も非常に有効でした。さらに階層管理ができるため、本社部門でも各事業所の管理状況を確認できます。社内すべての機器の状況を把握できることも、導入の決め手になりました。

――RaMSの導入が、一つ目の事業所から、他の事業所、さらにグループ会社へと広がった経緯を教えてください。

当社では2015年から、フロン排出抑制法の施行に合わせて、事業所単位でRaMSの導入を始めました。最初に導入したのは岡山県倉敷市にある水島製造所です。当初は、導入の判断は各事業所に任せていましたが、RaMSは非常に有用だということで、その後、鈴鹿製造所、川崎製造所、守山製造所へと広がりました。

法令を遵守して適切に機器管理を行うためにRaMSの運用が有用であると判断したことがきっかけとなります。2024年度からは本社主導で一斉に工場へ導入し、2025年度にはグループ企業にも展開しました。

■解析機能でフロン漏えいを未然に防ぐ

――システム導入では、現場の負担増を懸念する声も出やすいと思います。実際に導入を進める中で、現場ではどのように受け止められましたか。

導入前は、現場の負担が大きくなるのではないかという懸念もありました。管理者に説明した際にも、「現場が大変になる」から導入に消極的な声があると考えていました。

ただ、実際に導入を始めると、現場からのクレームはありませんでした。むしろ、積極的で、前向きな声が多く、非常にスムーズに受け入れられました。現場の担当者も、適切に管理するための仕組みを求めていたのだと思います。RaMSの機能と、現場が抱えていた課題感が合致したことで、広がっていきました。

――現場でも、より確実に管理できる仕組みを求めていたということですね。では、実際に運用してみて、導入前には見えていなかったメリットはありましたか。

導入後に感じたメリットは、法令上の点検漏れや管理漏れを低減できたことです。RaMSは、事業所内で複数のユーザーを登録できるため、機器管理を一人の担当者に任せるのではなく、複数人で管理できます。記録をすべてRaMS上で保管できる点も大きいです。運用開始後は、書類で管理する必要がなくなり、担当者の負担軽減につながりました。

特に、導入後に有効だと感じたのが「RaMS-ex」の機能です。RaMS-exでは、機器の分類ごとに、故障箇所や漏えい傾向を解析できます。社内で発生した故障や漏えいの一定の傾向を把握できれば、簡易点検時にどこを重点的に点検すべきかが見えてきて、フロン漏えいが起きる前に対処できます。RaMS-exを実際に導入して解析してみると、こんなに良い機能だったのかと実感しました。

■管理対象の機器はグループ全体で約1万台超に

――旭化成グループ全体で、多くの機器を運用されているとお聞きしています。現在はどのような体制で管理していますか。

旭化成グループ全体で、フロン排出抑制法の対象となる機器は約1万3000台あります。そのうち、定格出力が7.5kW以上の定期点検対象機器は、全体の約1割です。

機器の点検記録は、基本的には事業所の「機器所有部門」と「設備保全部門」が管理し、点検実施状況を「環境安全部門」に報告しています。設備保全部門がある事業所では、同部門が簡易点検の実施や、点検業者への作業依頼を担います。一方で、設備保全部門がない事業所は、機器所有部門と環境安全担当部門が協力し、機器の点検を実施する体制です。

――1万3000台となると、従来の管理方法ではかなり大変だったのではないでしょうか。RaMS導入前は、どのように管理していましたか。

RaMS導入前は工場ごとにエクセルで管理していました。実際に現場で管理している担当者は、点検漏れがないか不安を抱えながら対応していたと思います。機器台数が非常に多いため、エクセルで管理し続けるには限界がありました。そのため、RaMSを導入するという声がかかると、現場でも「入れよう」という受け止め方が多かったのだと思います。

――フロン排出抑制法・改正法について、社内ではどのように周知していますか。

法改正の周知は、主に2通りで行っています。一つは、全社の環境安全推進者が集まる会議での共有です。各地区の環境安全部長や、関係会社の環境安全責任者が集まる場で、法令の改正情報を周知し、対応を行っています。

もう一つは、環境安全担当者教育という環境に関する教育です。年2回実施しており、その場で法令改正の内容を説明し、事業所への対応を依頼しています。実際に管理する担当者などが毎回約200人参加しています。

法改正の正式な周知とは別に、環境グループだけの環境担当者交流会もあります。各地区の環境担当者が集まり、環境に関する取り組みを共有し、意見交換する会議です。毎年行っていて、RaMSについてもこの交流会を通じて事業所間で広がっていきました。

――今後フロンがモントリオール議定書・キガリ改正により生産調整で供給が削減されることについて、どのような対策を検討していますか。

対策としては、ノンフロン冷媒を使用した機器への更新ができるかを検討するようにしています。ノンフロン冷媒は地球温暖化への影響が少ないため、更新が可能な場合は、対象事業所に検討してもらうようにしています。

ノンフロン機器への展開が難しい場合もあります。その場合は、地球温暖化係数の低い冷媒の使用を検討するように依頼したり、検討を支援したりしています。

■現場の「声」を社内報で伝える

――フロン対策格付けで、今回最高評価のAランクとなりました。評価が高まった背景には、どのような取り組みがあましたか。

当社では以前から、GHGを減らすために、フロン対策へ取り組んできました。その結果が格付けにつながったのだと思います。その活動をサステナビリティレポートにも積極的に掲載するようになり、格付けがよくなってきたという感覚もあります。実際に活動しているからこそ、レポートにも掲載できます。

――こうした評価は、社内ではどのように受け止められていますか。現場の担当者への共有や評価にもつながっているのでしょうか。

格付けで評価されたことは、社内報でも紹介しています。ただ、表彰されたこと自体を伝えるというよりも、現場の最先端の人が頑張ったから表彰されたということを称えたいという思いがあります。必ず現場の最先端のインタビュー記事を載せるようにしています。

今年も、導入機器台数が多かった事業所の担当者のコメントを電子版の社内報に掲載しました。昨年も、最初にRaMSを導入した水島製造所の担当者を紹介しました。

聞き手:香川希理弁護士(香川総合法律事務所代表)

■ ■ ■

■JRECO(一般財団法人日本冷媒・環境保全機構)とは

一般財団法人日本冷媒・環境保全機構は、冷凍空調機器からの冷媒フロン類(CFC、HCFC、HFC)の大気放出抑制、使用の合理化及び管理の適正化に係わる事業の推進を、関係事業者との連携及び行政当局との協調のもとで実施している。

事業の一環として2015 年に施行されたフロン排出抑制法の遵守ツール「RaMS」をクラウドで提供する。「RaMS」には主務大臣から認可された「情報処理センター」機能を含み、書面によらない一元管理とデータ解析によるDX 推進が可能だ。

■RaMS(冷媒管理システム)とは

RaMS は第一種特定製品(業務用冷凍空調機器)とその冷媒の管理ができるクラウドシステム。経済産業省と環境省から認可された情報処理センター機能を包含し、法により管理が義務付けられている全書面を電子的に改正法に準拠した形で管理でき、フロン排出抑制法を遵守することが可能になる。

▶代替フロンやRaMSについて詳しく知りたい方はこちら→ yamamoto(a)jreco.or.jp

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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キーワード: #フロン

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