関電工のバイオマス発電所に批判噴出、住民提訴も

■発電コスト重視の大規模木質バイオマス

しかし住民側は同社に不信感を募らせている。「関電工は行動指針で『環境に関する自主基準を制定する』などとホームページで主張しているが、自主基準を制定しようとする姿勢は皆無」(原告準備書面)と厳しく批判。また、「(同社に)こちらが質問しても文書で回答しない」(羽鳥氏)という。

計画の問題点は環境影響への懸念にとどまらない。前橋バイオマス発電所は地域外の資本が出資する事業だ。地域には燃料木材の売却代が還流するが、売電で得た利益は地域外に持ち出される形だ。また、発電で生じる熱は地域熱供給(熱電併給、コジェネレーション)には活用せず、そのまま捨てられる。

地域資源の活用で地域経済の活性化が見込める自然エネルギー事業のメリットは、今回の計画では限定的なものにとどまると言える。関電工も「発電所での雇用は予定しているが、(地域経済への波及効果を)数字で示すのは難しい」と話す。

ちなみに熱電併給を行う際、熱需要は分散しているため、出力2千キロワット未満の小規模木質バイオマス発電が向くとされる。その熱効率は最大で8割とも言われ、エネルギーのムダが少ない。一方、大規模木質バイオマス発電は発電コストで有利だが、熱電併給よりはエネルギー効率で劣る。

つまり計画は、地域経済やエネルギー効率よりも発電コストを重視していることになる。そして現在、前橋バイオマス発電所と同様、日本各地で大規模な木質バイオマス発電計画が進むが、背景には木質バイオマス利用をめぐる制度上の問題点があるという。

自然エネルギー財団は25日、木質バイオマス利用に関する提言を発表した。この中で「日本のFIT(固定価格買取制度)は発電のみを対象とし、熱電併給へ誘導する制度設計になっていない」などと指摘。また、木質バイオマス資源の国内需要がひっ迫する可能性もあるとしている。

財団は、木質バイオマスに大規模区分を設けた上で買取価格を引き下げることなどを提言するが、木質バイオマス利用が地域に受け入れられ、持続可能なものとなるよう、制度の点検が問われている。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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