NGOとの連携は企業の生存競争

――企業や投資家に温暖化対策などを働きかけるプラットフォーム「We MeanBusiness」(WMB)に象徴されるように、NGOのアプローチや組織体系も変化してきています。
 
BSR(ビジネス・フォー・ソーシャル・レスポンシビリティ)やCDP(旧カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)など、WMBはカーボンフリー社会の実現に向けて行動している団体が自発的に集まった緩やかなプラットフォームです。
 
WWFは、世界各地にネットワークを持っているからこそ、アジア太平洋地域全体のアジェンダに関与できたり、グローバルな働きかけができたりしています。ある意味、NGO業界は「集まってなんぼ」の世界なのです。
 
志が同じであれば、多少やり方が違っても、連携してみる。つまり「ミッション・オリエンテッド(理念重視)」の考えがグローバル企業とNGOの双方に存在しています。

――企業の温暖化対策を例にすると、当然、CO2排出量は少ないほど良いわけですが、ゼロを宣言する会社もあれば、そうでない会社もあります。自然エネルギー100%への転換を宣言する「RE100」も同じで、100を目指す企業とそうでない会社があります。企業が宣言する意味とは。
 
1 0 0 % を目指すのと、80%を目指すのでは、やり方が全く違います。米国や欧州の企業は総じて将来に向けた高い目標を掲げて、そこから目標に向けたロードマップを刻む「バックキャスティング」(※)が得意です。

一方、日本人は、既存の技術を用いて改良していき、現状の40%を50%にして、100%に近づけていくことが得意です。ですが、長期ビジョンをつくりあげることが苦手です。
 
私は長年、ルールメイキングの世界にも携わってきました。米国や欧州をはじめ、グローバルなルールメイキングのプロセスを見ていると、欧州では、常に先進的な取り組みをしていますが、達成した顔ぶれをみると欧州の人たちはそう多くない。 

世界では、80%を目指すと言って60%しか達成できなかった人より、100%を目指して60%達成できた方が注目されます。どのくらい改善できたかが問われるのです。

まず100%を宣言するのが欧州のやり方です。日本企業はグローバル経済への貢献が大きいにもかかわらず、国際ルール形成の場では消極的で非常に残念です。
 
国際交渉に長けた欧州はあるべき水準に目標を設定し、「オーバーステイト」(誇張)しておきながら、実際には「アンダーアチーブ」(低達成)しているケースも多い。
 
一方、日本企業は努力の延長線上で達成可能な目標を置き、オーバーアチーブ(超過達成)している事例もあります。しかし、「アンダーステイト(控えめ)」や「コミットし
ていない」と、非難されることさえあります。これでは世界で戦えないのです。
 
ソニーで初めて渉外を担当したとき、IBM、トヨタ、東レ、GEをはじめ、渉外が強いと言われる内外の企業約20社を回りました。総じて外資系企業が強かったです。
 
というのも、社長直下に渉外担当の役員がいて、ワシントンの本部から直接指示が飛び、やっていることをすべて数値化するので逃げ場がない。しかし、日本の渉外は、どちらかというと、役人と失礼がないように付き合い、業界団体として意見を持って行くといった状況です。
 
国際ルール形成はタフな交渉を通じてビジネスの領域と行動を定義する業務なので、日本も欧米に劣後せず、企業とNGOが連携しながら参加していく必要があります。

この続きは、オルタナ53号(全国書店で発売中)掲載の「オルタナパーソン」でご覧ください。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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