COP25報告:史上最長の延長COP、3つのハイライト

①排出量の2重計上(ダブルカウンティング)を防ぐこと

A国で10トン削減した分を、B国に移転する(すなわちB国が削減したとみなすこと)ならば、両方の国で10トン削減した、と主張すれば、これは削減量の2重計上になります。2重計上するならば、世界全体としての削減量は減るどころか増えてしまうことになります。そのため、削減した相当分を二国間、あるいは多国間で調整して、二重計上を防ぐルールが必要なのです。

「相当調整」と呼ばれるこのルールをいかに厳格に作るかをめぐって、意見が分かれています。一部の新興途上国、特にブラジルが、この相当調整は、二国間で取引する6条2項のメカニズムだけに適用されるもので、国連管理型の6条4項には適用しない、と主張して、他の国々と対立を深めています。

会期延長されての議長提案では、この二重計上を期限と条件をつけて認める、という妥協案が提示されましたが、最終的に合意は流れて、COP26へ先送りされました。

排出量削減のダブルカウント

② 京都議定書時代のクレジットをパリ協定でも使えるようにするか

もう一つ、国によって大きく主張が異なる点が、2008年から実施されている京都議定書の時のクレジットを、パリ協定でも使えるようにするかどうか、です。

京都議定書の下で、初めて国を超えて削減量(排出クレジット)を国際移転する仕組みが出来上がったのですが、京都議定書においては各国は削減目標を容易に達成できたため、多くの排出クレジットは未使用のまま残る結果になりました。

その未使用の排出クレジットを、パリ協定の下で使えるようにしてほしいと、ブラジルやインドなどの新興途上国が強く主張しているのです。これをそのまま使えるようにするならば、それでなくても足りないパリ協定の削減量が、さらに不十分になってしまうために、多くの国は反対しています。

この論点は2018年のCOP24の時からずっと交渉が難航し、今回のCOP25に持ち越された最大の要因となった点です。特に強硬だったのは、ブラジルとインドで、さらにCOP25では中国も主張して、交渉が遅れる最大の要因となりました。

それに対して、スイスや欧州連合、小さな島国連合などは、「抜け穴を作るくらいならば、6条合意はなし」との態度をCOP25当初から貫いていました。

こちらも期限をつけて認める案や、条件を緩める案など妥協案が出されましたが、妥協案が検討されたものの、最終的には折り合わず、COP26へ持ち越される要因となりました。

【1】(2)「市場メカニズム/非市場メカニズム」以外の論点

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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