■フェーズが変わる旅行業界とホテルの在り方

では、近年「ラグジュアリー」に傾倒してきたホテルや旅館は、今なお流行中の感染症収束後には、どのような変化を見せるでしょうか。

恐らく、順当な利益を挙げてきたステークホルダーも、一般の温泉愛好家も、バックパッカーも、リゾート通も、一斉に旅に対する概念、ホテル選びの基準を大きく様変わりさせるのではないかと想像しています。

そして今後は、旅の仕方においても、ホテル選びにおいても、人が人として感じる幸せは何かを思い描くようになるでしょう。

感染症という目に見えない大敵に向かい体験をしたことにより、バリアを克服した暁には、何が贅沢で、何が真の幸せか、人々の持つ人生観はあきらかに変化するはずです。

繰り返しになりますが、それによって旅のデスティネーションも、旅に求める贅沢も、それぞれが冷静な選択をし、自分の人生や好み、夢を描いていた旅先などを躊躇なく選ぶことになるでしょう。

今後の世界は、ロボットが、ITが、AIが――と、世界の多くのIT関係者、経済論者、各国トップクラスの首脳たちまで発言していますが、日本市場を見渡せば、この感染症蔓延の中で、皮肉にもいかに日本がIT後進国であったかが世界に露呈されました。

経済大国として世界を牽引するには、さらなるIT革命や急速な推進が求められますが、しかし、ホスピタリティ産業では、ある意味で「人と人のマニュアル的な関係」が時代遅れであるとは思えません。

人々の多くが温もりのあるサービスが心地いいと思い、人の手を介するサービスが最も贅沢だと思えるなら、ホテルや旅館のもてなしやサービスを「ALL IT化」する必要はないのです。むしろ、ロボットやITを巧みに使いこなし、同時に、温かで寛容なもてなしのできる「人材」が育ってほしいのです。

さて、世界で稀に見る災難を幾度も乗り越えた復活を果たしてきた日本。今回の新型コロナウィルス肺炎がある程度収束しても、私達は、今後ウィルスと共存して生きなければなりません。そのためにも、観光業、宿泊業には大きな信頼に基づいて、確実な衛生観念が施された旅が可能な日本社会の復興が望まれます。

ホテルの選択に於いても、今後旅行者のプライオリティは、確実に「自然回帰」や安らぎなど、安心して深呼吸のできる環境や、プライベート感を感じる静かなホテル、オーナーの顔が見える宿などにシフトし、クリーンさが実感できることも選択肢のひとつに追加されるのではないでしょうか。筆者に親しい世界中のホテル関係者や観光関係者は同様に口を揃えました。

また、近年のトレンドにもなりつつあった「ウェルネス」や「SDGs」(持続可能な開発目標)への意識改革が進み、形はどうあれ、ホスピタリティ業界はシンプルなラグジュアリーに傾倒していくのではないかと考察しています。

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