そろそろ気付いてほしい動物に配慮しないリスク

【連載】アニマルウェルフェアのリスクとチャンス(2)

鶏卵大手アキタフーズの元代表が当時の農林水産大臣などに賄賂を渡したという事件の動機が、アニマルウェルフェア向上の阻害だったと知り、時代が変わったことを感じた。畜産は、今、歴史的な転機を迎えている。19世紀に発展した工場式畜産の限界、害悪が明らかになり、それを自然なものに戻すことが求められている。その波が、ようやく日本にも来たことを、もっとも抵抗していた人物が自ら決定づけた。

畜産はワンヘルスの考えで

ワンヘルスは、人、動物、生態系の健康はつながっているとする考えで、人の未来を守るためにも動物を守らなくてはならないという概念だ。陸生動物のほとんどは工場式畜産の中に閉じ込められているが、この工場式畜産ほどウイルスや菌の繁殖と進化に向いている場所はない。

動物たちは太陽の光も浴びられず、運動もできず、空気も悪く、骨折などの外傷にも内部疾患にも苦しみ、心身ともにストレスが高く、免疫が低い。そのような動物が、超過密に飼育され、清掃は殺されるまでされることはなく、トイレもごはんも就寝もすべて同じ場所ですることを強いられ、しかもそれらの動物は遺伝的に同一であるため、ウイルスや菌の増殖を阻むものはない。

国内のバタリーケージ飼育の様子

新型コロナウイルス発生以降、動物利用が持続可能性を急激に奪うことに多くの人が気が付いたのではないだろうか。毎年5つの人間の病気が新たに発生し、そのうちの3つは動物由来であり、特に家畜化された動物種は人と共有するウイルスが多い。

これまでも現在も人獣共通感染症の発生の元になる多くは、野生種の動物ではなく、畜産動物やペットなどの家畜化された動物なのだ。

そんな中で鳥インフルエンザが日本でも流行している。毎回違う変異を遂げた鳥インフルエンザが流行っているのだから、その変異が人間に刃を向けるのは時間の問題と言える。

畜産物の大量消費を根本から見直し、飼育方法を切り替え、密を避け、一つの畜舎に詰め込む頭数を減らさなくては、2009年に発生した豚インフルエンザ(H1N1pdm09)のパンデミックと同じようなことが起きる。豚インフルエンザでは抗体を持っていなかった若年層が犠牲になった。私たちは、次にどのようなウイルスや菌に出会うのだろうか。対策は急いだほうがいい。

元農水相「贈収賄」疑惑から学ぶこと

chihirookada

岡田 千尋(NPO法人アニマルライツセンター代表理事/オルタナ客員論説委員)

NPO法人アニマルライツセンター代表理事・日本エシカル推進協議会理事。2001年からアニマルライツセンターで調査、戦略立案などを担い、2003年から代表理事を務める。主に畜産動物のアニマルウェルフェア向上や動物性の食品や動物性の衣類素材の削減、ヴィーガンやエシカル消費の普及に取り組んでいる。【連載】アニマルウェルフェアのリスクとチャンス

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