なぜ鶏卵業界は動物福祉を恐れるのか

一方、鶏肉の場合、消費者意識の変化だけではない動機づけが存在する。抗菌剤が効かない菌により人々の健康が脅かされるという薬剤耐性菌の問題だ。

2050年には薬剤耐性菌による死亡者数が、癌の死亡者数を超えると予測されるほど重要な課題であるが、抗菌剤の3分の2が畜産・水産業に使われているにもかかわらず、対策は遅れてきた。

2018年のEU決議では、動物福祉が低ければ病気の罹患率が上がり、動物福祉に配慮された飼育自体が病気の予防効果を持ち、抗菌剤を減らすことにつながるのだと強調された。これに加え、欧米の動物保護団体が連携して決めた鶏肉の福祉基準「ベターチキンコミットメント」に準拠させることを目指したキャンペーンが生まれた。

動物福祉に配慮された肉用鶏の飼育(©️Compassion in World Farming)
chihirookada

岡田 千尋(NPO法人アニマルライツセンター代表理事/オルタナ客員論説委員)

NPO法人アニマルライツセンター代表理事・日本エシカル推進協議会理事。2001年からアニマルライツセンターで調査、戦略立案などを担い、2003年から代表理事を務める。主に畜産動物のアニマルウェルフェア向上や動物性の食品や動物性の衣類素材の削減、ヴィーガンやエシカル消費の普及に取り組んでいる。【連載】アニマルウェルフェアのリスクとチャンス

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