問題の本質はニつだ。第一に、およそ公的な会合で物事を決めるべき場において、「みだりに意見を述べる者は歓迎されない」ということを、彼は公言した。日本のあらゆる企業や諸団体に共通の暗黙のルールを、本音で話したのだが、問題はそのルールそのものがダメなものだということにある。
そもそも根回し済のシャンシャン総会自体が、生産性を下げるだけの時間の無駄だ。だがそれ以上に問題なのは、対立する議論の中からその場で相互に学んで弁証法的に物事を決めていくという世界共通のOSを、日本人と日本人の組織は鍛えていないということである。
在学時から暗記力と同調圧力感知能力ばかりを研ぎ澄まし、対立の化合物として成長を産む応答作法を訓練していないので、日本からは世界に通じる人材がなかなか生まれない。首相の、評判の悪い原稿読みも、まったく同じ欠陥の表れである。