キリン、脱炭素はチャンス 40年に再エネ100%へ

日本企業でいち早くCSV(共通価値の創造)を取り入れたキリンホールディングスが、脱炭素戦略を加速している。日本の飲料メーカーとして、いち早くSBTやTCFD、RE100などの国際イニシアティブに加わった。CSV戦略を統括する溝内良輔・常務執行役員が描く戦略を聞いた。 (聞き手・森 摂=オルタナ編集長、池田 真隆=オルタナS編集長)

キリンのCSV戦略を統括する溝内常務

─キリンはサステナビリティやCSVをどのように位置づけていますか。

経営の中核に置いています。2013年にCSV本部を立ち上げた時から掲げてきましたが、実態が追い付いてきました。特に、気候変動への取り組みに力を入れてきました。2017年には、キリングループの温室効果ガスの中期削減目標が日本の食品会社で初めて「SBT(サイエンス・ベースト・ターゲット) イニシアティブ」の承認を得ました。

翌年には、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への賛同を表明しました。これも、日本の食品会社として初めてでした。2020年にはSBTの目標を1.5℃ に更新し、RE100に加盟して、2040年までに再エネ100%導入を目標に掲げています。今年2月には、全国のキリンビール9工場の半分(仙台、名古屋、滋賀、神戸)で、PPA(電力購入契約)モデルで太陽光発電を導入しました。

名古屋工場は今年中に再エネ100%を実現します。日本ではピュアな再エネは流通量が少なく調達しにくいので、PPAモデルなどを活用して再エネを作る方にも関与していきたいと思っています。2050年にはバリューチェーン全体の温室効果ガスの排出量実質ゼロを目指し、菅首相の「脱炭素」宣言をリードしていきます。

■ヒートポンプでエネ率向上

─温室効果ガスを削減する取り組みで最も力を入れているものは。

ヒートポンプです。工場に導入することで、温室効果ガスを削減し、エネルギー効率が上がりました。飲料メーカーの中では、グローバルでみても、ヒートポンプの導入実績ではリードしていると自負しています。

9工場すべてで、排水処理設備にヒートポンプを導入しました。ビール工場は排水を微生物を使って浄化します。微生物の活性を維持するため、蒸気で加温していました。これをヒートポンプに変えることで、温室効果ガスの排出削減とエネルギーの効率化につなげたのです。

コスト削減で得た利益は、次の削減対策や再エネの購入費に使うことにしています。

─2020年10月の菅首相「脱炭素宣言」はどう感じましたか。

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森 摂(オルタナ編集長)

森 摂(オルタナ編集長)

株式会社オルタナ代表取締役社長・「オルタナ」編集長 武蔵野大学大学院環境学研究科客員教授。大阪星光学院高校、東京外国語大学スペイン語学科を卒業後、日本経済新聞社入社。編集局流通経済部などを経て 1998年-2001年ロサンゼルス支局長。2006年9月、株式会社オルタナを設立、現在に至る。主な著書に『未来に選ばれる会社-CSRから始まるソーシャル・ブランディング』(学芸出版社、2015年)、『ブランドのDNA』(日経ビジネス、片平秀貴・元東京大学教授と共著、2005年)など。環境省「グッドライフアワード」実行委員、環境省「地域循環共生圏づくりプラットフォーム有識者会議」委員、一般社団法人CSR経営者フォーラム代表理事、日本自動車会議「クルマ・社会・パートナーシップ大賞」選考委員ほか。

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